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2017年3月

2017年3月31日 (金)

新聞の読み聞かせをする

20170326hanamiyama
「花見山」の白梅 3月26日撮影


 今日で3月も終わります。
 昇平は毎日安定した生活を続けていて、毎朝元気に事業所へ出勤し、夕方「疲れた~」と言いながらも充実した様子で帰宅していますが、それ以外の大きな変化として「新聞」に関心を持つようになりました。

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 そもそもの始まりは、長い間彼を苦しめてきたネットでの悪口雑言の数々。昇平自身は反論の書き込みをしたりはしないのですが、納得のいかないひどい内容が多いのに、反論するどころかそこに賛同するような書き込みが多いことにもまた納得がいかなくて、ひいては社会全体に対する不信・不安にまでつながっていました。

 もちろん、それは情報を入れるチャンネルが偏っているから起きることなので、私たちとしても「それは一部の人たちだから」「冗談で大袈裟に言っているだけだから」と説明してきたわけですが、それを実際に確認する手段もないので、ずっともやもやしたものを引きずっていたようで、ときどきフラッシュバックのように吹き出しては、昇平を不安定にしてきました。

 そんな際のやりとりの中で、私が「現実の社会においては、そんなのは本当の一部分なんだよ。それを知りたかったら新聞でも読めば」と言ったら、昇平は一瞬考えてから、「うん、それじゃ新聞を読んでみる……お母さん、読んでくれる?」と言うではありませんか。
 新聞は情報量が多いので、いきなり彼に渡しても、文字がびっしり並んだ紙面に圧倒されて理解できないだろう、と思ったので、「いいよ、読んであげるよ」と引き受けました。
 かくて、夕食の片付けが終わって2階にあがったところで「新聞タイム」となりました。

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 我が家で購読しているのは、地方紙の「福島民報新聞」です。
 テレビの全国ニュースもそうなのですが、中央紙になると、どうしても日本中で大きな話題になったニュースを取り上げることが多くなります。そうすると、凶悪事件やびっくりするような大きな事故、事件、政治の不正の問題や海外のテロなど、不安をあおるような内容が増えてしまいます。
 でも、地方紙の場合は、もっと身近な、本当に自分の生活に即したニュースがたくさん載ります。ほのぼのした話題や、ちょっとした集まりや活動の報告もいろいろ載るし、福島県の場合、なんと言っても「震災復興」の記事が非常にたくさん載ります。
 実際に自分が暮らす社会を実感するには、地方紙の方が適切、という判断もありました。

 読みました。
 第一面のトップニュースから始まって、国際情勢、経済欄、家庭欄、地方のニュース、社会欄……。
 書かれていることをそのまま読んでも理解が難しいと思ったので、内容をかいつまみ、わかりにくいと思われることには解説をしたり、経緯を説明したり、ときには質問を投げかけてみたり。

 その日の新聞には韓国で沈没した旅客船セウォル号が引き上げられたというニュースも載っていました。
 セウォル号では船長をはじめとする乗組員が乗客を置き去りにして我先に逃げてしまったこと、修学旅行の高校生が大勢乗っていて、その多くが亡くなったことを説明すると、真剣な顔で耳を傾けて「怖いな」と言いました。
 冬の間閉鎖されていた観光道路の除雪が進んでいるというニュースには、道路脇に6メートルもの雪の壁ができていると聞いて、「すごい! 行ってみたいな!」と目を輝かせました。
 全部読み聞かせるのに30分以上かかりましたが、その間、時々ゲーム画面を眺めながらも、耳はこちらに傾けていて、全部聞き終わると言いました。
「この世界では本当にいろいろなことが起きてるんだね。なんだか安心したな」
「ネットでよく聞くようなことばが全然なかった」とも言いました。 

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 以来、毎晩夕食後に新聞の読み聞かせをするのが習慣になっています。
 本人が「今夜も新聞を読んでもらえる?」と言ってくるのです。
 なので、私のほうも、何年ぶりかで新聞を隅から隅まで読むようになりました。
 為替相場や粉飾決算の話などは、ニュースとしては大きく取り上げられているけれど、昇平にはまだわかりにくいのでパスしますが、それ以外のところは、見出しだけでも読んでやるようにしています。

 昇平としては、やはり、若者や子どもを巻き込んだ事件、事故に対する関心が高くて、那須スキー場での雪崩事故にも「怖いね」と言いました。私も「本当に痛ましいよね」と答えました。
 その一方で、美味しそうな記事や楽しそうなニュースにも関心は高く、昨日は、ナポリタン選手権に出場が決まったという、ナポリタンスパゲティとインドカレーの合い盛りに、「食べてみたい~」と言いました。
 その日の新聞の中でどの記事が一番印象に残ったか最後に聞くのですが、トップニュースではない、身近なニュースに関心を持つことも多くて、こちらとしても面白く感じています。

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 そんなこんなを続けているうちに、昇平はラジオやテレビのニュースにも関心を示すようになってきました。
 これまでは流れていても我関せずと言う感じで無関心でいるか、目にしてしまった映像にショックを受けて不安定になるかだったのですが(だから、昇平が来るとテレビのニュースを消していた時期もありました)、今はじっと耳を傾けて、自分なりの感想を言うようになってきました。
 不安になるような内容のニュースのときにも、「でも、世の中はそういう悪いことだけじゃないと思うんだ」と言うようになってきています。
 新聞に載っている膨大なニュースから、世の中では悲喜こもごも、様々なことが起きているのだということを、少しずつ実感してきているのだと思います。

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 昇平のそんな様子を旦那に話して聞かせたら、「ほう」と感心した後で、「でも、最近は新聞を全然読まない若者が増えてるよな。で、スマホでネットばかり見てるわけなんだが、ネットはどうしても情報量が少なくて、しかも偏ってるから、これまでの昇平のように社会をきちんと理解できないでいるヤツもけっこう増えてるんだと思うぞ」と言いました。
 それは……確かにそうなのかも。

 広汎性発達障害のために、生まれたときから社会を理解することに困難を抱えている昇平。
 でも、その障害で苦しい思いをしてきているからこそ、いま彼は自分からがんばって社会を理解しようと努力しています。
 我が子ながら、偉いなぁ、と思う一方で、彼よりもっと楽に社会が理解できるのにそれをやらない若者が増えているという事実に、なんとも複雑な気持ちになったりもしたのでした。 
 難しいですね。


【写真の解説】
 福島の「花見山」が明日4月1日から観光シーズンをスタートします。
 「福島に桃源郷あり」と言われた花の名所に一足早く行ってきたのですが、白梅が満開で、山全体が梅の花のいい香りに包まれていました。桜の見頃は4月中旬頃のようです。

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2017年3月18日 (土)

近況と就労支援事業所の父母会に思う

Setsubun2017


 てくてく日記の更新が2か月ぶりになってしまいました。
 先月も昇平が通う事業所の父母会はあったのですが、私自身がものすごく多忙で(年度末が近づいていたので、やるべきことや仕事が一度に重なりました)、ブログまでとても手が回らなかったのでした。
 今もまだ忙しいのですが、徐々に仕事が片付いてきたので、少しずつ余裕が出てきた気がします。


 さて、本題の昇平の近況ですが――

1.今も仕分け作業の研修をがんばっています。
 事業所の利用者8名と指導員2名でユニットになって、ホームセンターの商品を仕分ける工場へ行き、納品する店ごとに商品を仕分けたり、その商品を入れたコンテナを台車に積み込む作業をしたりしています。
 年が明けて繁忙期が過ぎたので、今は火、木、金の3日間が仕分け作業、水曜日は事業所で半日の研修や内職、土曜日はイベントや研修に参加、というパターンが多くなっています。
 仕分け作業にもずいぶん慣れたようで、ユニットのメンバー同士の仲も良く、みんな前向きに良くがんばっているようです。

 事業所での研修は、イベントの準備をしたり、就職が決まって卒業していく人への色紙作りをしたりすることが多いのですが、昇平は絵が得意なので、イラストを任されたりするようです。上の写真は節分イベントの豆まきの的にするために、昇平が描いた青鬼です。(右の鬼は別の利用者の作品)
 内職は、ボルトとナットを組んで袋に入れる作業などをしたようで、たまたま見学に来た支援学級の中学生たちが、その様子を見て「みんなものすごく集中してやっていて、すごいと思った」と感想を寄せたのだそうです。数も多かったので、その日事業所にいた利用者総動員で、力を合わせてノルマをやりきったのだと聞きました。


2.休日はのんびり。月曜日はフリースクールへ。
 半日のイベントや研修を終えた後、土曜日は外食をして帰宅。ファミレスやハンバーガーショップ、ラーメン屋、回転寿司屋など、その日の気分で行く店を変えています。昼食代としてワンコイン(500円)を渡しているのですが、それでは足りないようで、足が出た分は自分で稼いだお金から支払っています。

 月曜日は仕分け作業のメンバーは休日になっているので、出勤日数が不足しない限りは、昇平も休んでいます。2月はほぼ毎週月曜日が休みだったので、久しぶりで連続してフリースクール「みんなのひろば」に行くことができました。
 「みんなのひろば」は昨年10月に新しい建物に転居。今までの場所から歩いて5分程度しか離れていないのですが、とても綺麗で広々とした建物なので、子どもたちはいっそうのびのびと過ごしているようです。昇平も休日を満喫して、リフレッシュしてまた仕事に行っています。

 3月11日で東日本大震災から丸6年が過ぎましたが、あのとき、「みんなのひろが」が使用していた建物が被害を受けて存続の危機に陥り、ネットで支援を呼びかけたら、本当に大勢の方たちが義援金を寄せてくださいました。今でもあのときの感謝の気持ちは忘れません。私たちが、そして、昇平たちが、「自分たちは多くの人たちから応援されているんだ」と感じた瞬間でした。
 新しい建物に引っ越してから数ヶ月が過ぎてしまいましたが、転居報告のページというのを私のサイト内にまとめたので、よろしかったらご覧下さい。新しい建物の写真が載っています。
   ↓
http://asakuratown.sets.ne.jp/bokin/new-hiroba.html


3.事業所の父母会の総会終了。私は新年度の会長に。
 これに関しては、書いた通りです。
 立ち上がってまだ1年半しかたっていない父母会なので、何もかも手探りの第一期が終わり、いよいよ第二期に突入。私は会計だったし、ネットも得意なので、何かと会長のお仕事を手伝っているうちに、新しい会長を引き受けることになりました。

 私が所属している親の会の『福島とーます!』だったら、メンバーの入れ替わりもあまり激しくないので、同じメンバー同士気心が知れ合っているし、何年も活動していくうちに仕事も覚えて、今では「あ・うん」の呼吸で運営が進んでいきます。(ちなみに、私はこちらでは広報と支部の共同代表を務めています)
 でも、就労支援事業所の場合、利用者は就職が決まればどんどん抜けていきます。ということは、その保護者も抜けていくということ。年度の途中でも抜けるので、学校のPTAより入れ替わりは激しくて不規則です。しかも、学校ならばPTAの歴史は長いので、もうシステムが確立しているし、先生方も強力に保護者役員をサポートしてくれますが、就労支援事業所の、できたばかりの父母会では、そういうわけにはいきません。こちらでアクションを起こさずに受け身のままでいると、あっという間に空中分解してしまうでしょう。

 でも、初代会長さんが本当に一生懸命会の立ち上げに携わってくださったので、利用者の保護者の半数近くが父母会に参加してくれています。学習会や研修、相談会を兼ねたお茶会など、活動もけっこう活発にやってきました。例え就職して卒業したとしても、その後の定着支援というものがあるので、卒業後も事業所とはつながっておいたほうがいいし、保護者同士の情報交換にもとても価値があります。
 せっかくのこの気運をなくしたくない、と本当に思います。
 立ち上げるのはとても大変。人と人とを結び合わせるのも本当に大変。でも、せっかくここまでうまい感じに進んできたのだから、これを次の代の保護者につないでいきたい。
 そのために、今、いろいろと準備をしているところです。
 新しい役員の皆さんと協力しながら、中継ぎ投手のような会長になれたらいいな、と――そんなことを考えているこの頃です。

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