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2016年4月

2016年4月22日 (金)

人参皮むき作業の実習報告

Appleblossoms
福島は今リンゴの花が満開です


 昨日は昇平の事業所で父母会があり、改訂が続く障害者総合支援法の勉強会や会社の事業報告の後、利用者(この事業所ではメンバーと呼ばれます)の普段の活動の様子を撮影したスライドショーを見ました。
 今回は「人参の皮むき作業特集」。そう、昇平が今、毎日取り組んでいる作業です。

 事業所とは別の場所に事務所を借り、そこにテーブルや椅子を運び込んでの作業。
 みんな、専用の帽子をかぶり、マスクや手袋をして、衛生面に気を配りながら一生懸命ピーラーで皮をむいていました。
 もちろん、昇平もいました。普段メンバー4人とスタッフ1人の5人で行うそうで、メンバーは男女2人ずつが基本。人参は1日に200kgを扱うのだそうで、重たい人参のコンテナを車に載せたり下ろしたり、出来高払いなので、むき終わった後の人参を計量したり、また車まで運んだり……という力作業の場面で、昇平もがんばって働いていました。というか、ほとんどの場面に昇平が映っていました。重い人参もなんのその、真剣な顔で運んでいる姿がそこここに。

 ああ、そういえば、とてもつらかった中学時代とその直後に来た震災で、昇平は精神的にどん底に落ちたけれど、震災の後片付けで重い水やゴミを一生懸命運んでくれて、それを家族全員から感謝をされたものだから、「自分にもできることがあるんだ」と思って復活できたんだ、と自分でも話していましたっけ。
 自分は他の人より力がある、だから力仕事でなら役に立てる――そんな自覚が育ったから、実習の場でも自分から進んで運ぶ作業をやっているのでしょうね。
 あのときの経験がちゃんとここに生きていて、「自分も社会で働けるんだ」という自信につながっているみたいです。
 スライドに映る昇平の顔は、本当に真剣ないい表情をしていました。

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 スライドを観た後は、希望者が個別にスタッフと相談することができます。
 私は「昇平の実習の様子を聞きたい」と希望を出していたので、人参の皮むき作業を受け持っているスタッフのMさんから、さらに詳しい話を聞くことができました。

 人参は毎日200Kg扱っていること。

 昇平は作業がとても丁寧で、むき残しもないので、確認する必要などないこと。作業も早くなってきたので、昇平ひとりで60Kgくらいはむいていること。

 自分の作業の合間に他の人の様子も見て、人参がなくなりそうだと気がついたら、むき終えた人参を運んで新しい人参のコンテナを持ってきてくれたりすること。

 日によって非常にむきにくい形の人参や、傷みのある人参が来ることもあるけれど、「これをむかないと終わらないから、がんばってむきましょう」と率先して言って、チーム全体を前向きに引っ張ってくれていること。

 最近は持ち前のユーモアも発揮するようになって、面白いことを言って笑わせてくれる場面が増えてきたこと。なんでも、昇平は人参を取りに行く車の中で「今日の人参はむきやすいか、むきにくいか」を予想していて、それがけっこう当たるものだから、「明日からはぼくを納品担当だけでなく、人参の予想担当にもしてください」と言ったそうな。

 以前昇平が言っていたとおり、むき終えた人参を工場に納品するのも、本当に昇平の担当だったこと。手順通りにきちんとやって、受付の人にも丁寧に挨拶ができていること。納品書の記入も昇平がやっているとか。

 ……とまあ、他にも本当にいろいろ聞かせてもらったのだけれど、どの話も昇平が真面目に積極的に取り組んでいる姿を伝えていて、さらに、そのことで自信もつけてきているのがはっきりわかって、話を聞かせてもらいながら私も嬉しくて嬉しくて、笑いながら、最後には涙が出ました。

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 前にも書いたけれど、昇平は発達障害としてはやや重いものを持っています。
 だからこそ、小さい頃から丁寧に教えたり工夫をしたりして、少しずつ少しずつ、できることを増やしてきました。
 一筋縄ではいかなかったけれど、社会の中で生きていくことの重要性や、他人と協力することの大切さも教えてきました。昇平が一番最初に出会った他人・社会は、私たち家族でした。

 保育園や学校の先生方にも恵まれることが多くて、熱心に昇平に関わってくださる方が多かったです。
 そこで教えてもらった数々のことが、今の昇平の中に生きているのを、はっきり見て取ることができます。
 たとえば、丁寧なことばでしっかり挨拶をすること。これができるようになっていたから、納品のときにも受付の方にしっかり挨拶ができて、結果として好印象になっているようです。
 昇平に関わってくださったすべての先生方に、本当に感謝、感謝、感謝です。 

 昇平は月曜日から金曜日まで休まず出勤します。
 人参の作業をするメンバーの中で、これだけコンスタントに出勤できているのは、昇平だけだとか。
 「だから、もし昇平さんに休まれたら、納品の手順をわかる人がいなくなって、みんな困ってしまうんです」と、これはまあ、スタッフさんのヨイショでしょうが、それでも、少し責任ある仕事を任せてもらえているのは、安定した出勤状況のおかげかな、と思ったりします。

 事業所の方では、昇平がこの人参作業でしっかり力をつけたら、次はいよいよ施設外実習(実際の職場での実習)を、と考えてくださっているようです。

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 明日は土曜日なので、人参の皮むき作業はお休み。
 今月の出勤日数もクリアできそうなので、昇平は明日は一日休みにして、福島市内に遊びに行くそうです。
 「お昼は何にしようかな~」と昨日から楽しそう。
 平日はしっかり働いて、週末には自分で稼いだお金でささやかな楽しみを味わって。社会への一歩を踏み出しつつある昇平です。
 

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2016年4月12日 (火)

人参の皮むき作業と納品作業

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伊達市保原町薬師堂の桜 (2016.4.3撮影)


 福島県は今、桜が真っ盛り。
 ここ伊達市や福島市の平野部は満開を過ぎて花吹雪や葉桜だけれど、標高が高い郡山市・須賀川市・白河市は今が本当の満開、そして後を追いかけて会津の桜が見頃を迎えます。
 広い広い福島県、県内各地を巡るだけで、ずいぶん長く桜が楽しめます。


 さて、そんな花美しい季節の中、昇平は毎日元気に就労移行支援事業所に通っています。
 利用を初めてすでに8か月あまりが過ぎ、事業所のやり方にもだいぶ慣れてきたので、3月の末からは作業時間が長くなりました。
 今までは水曜日と木曜日が半日でしたが、午前10時から午後4時頃までの終日に。
 作業内容も、タウン新聞のポスティングはひとまず終了して、月曜から金曜まで人参の皮むきになりました。

 連日終日同じ作業の繰り返しになるので、そのうちに飽きてしまわないか心配したし、実際1週間過ぎたあたりで「毎日こう人参ばかりじゃなぁ」なんてぼやいたこともあったのですが、「毎日同じ内容をきちんとこなしていくのが仕事ってものだよね」と私が言うと、「そうか。じゃあ、がんばろう」と言ってくれました。

 遅刻欠勤なし、週末のイベントにも積極的に参加(おいしいイベントが多いので楽しみなようです)、土曜日の午後はハンバーガー屋さんなどに回ってお昼を食べてから帰宅し、日曜日は家でのんびりゲームを楽しんだり、家族と一緒に花見に出かけたり、となかなか充実した毎日を過ごしています。


 人参の皮むき作業はカット野菜工場の下請け作業で、皮をむいた後は納品も手伝っているというので、昨夜、少し詳しく聞いてみました。

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私 「人参の皮むき作業って、何人くらいでやるの?」

昇平「う~ん……3人か4人くらいかな。あとはスタッフさん」

私 「どのくらいの量の人参をむくの?」

昇平「かなりたくさんあるよ。このぐらいの袋(と両手で一抱えほどの大きさを示して)が10個以上かな。100キロ以上あるかも」

私 「そんなに!? それをみんなでむくんだ」

昇平「そういうこと」

私 「むき終わったら、どんなふうに納品するの? 人参は洗っていくの?」

昇平「うちらでは洗わない。ビニール袋をしいた箱に入れてね、車に積んで運んでいくんだ」

私 「それを積みおろししたりするのを、昇平くんが手伝うんだね。他に納品を手伝う人は?」

昇平「男性の利用者がもうひとりかな。作業所に来るのが女性が多いときには女性のこともある。その人は付き添いみたいな感じで、納品はうちがメインなんだ」

私 「ふぅん。どんなことするの? 人参の箱をおろして?」

昇平「扉を開けて冷蔵庫に運び込んで、紙にはんこをもらって――」

私 「え、なに? 本当に納品の手続き作業をキミがやってるわけ? 工場の人と?」

昇平「ま、そういうこと」

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 びっくり。
 納品を手伝うと言っても、人参の積み卸し程度の力作業なんだろうと思っていたら、いつのまにかこんなこともさせてもらっていたようです。
 確実にスキルアップしていたんですね。は~。

 作業の間には昼食と昼休みがあります。話すことが苦手な昇平は自分からはあまり喋らないけれど、他の人たちの会話をいろいろ聞いているようです。
 これもいい経験です。


 実際には、昇平は決して軽くはない発達障害を抱えています。
 できることとできないことの差が非常に大きくて、全体のレベルができないほうに引っ張られてしまっている状態なのですが、それでもこんなふうにステップバイステップで丁寧に支援してもらえば、できることがどんどん増えていくんだなぁ、と嬉しく思いました。

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