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2015年7月 1日 (水)

その日の出来事

 昇平は毎日、事業所から帰ってくると、その日の出来事を話してくれます。

「今日は座学でパソコンのタイピングをしたよ」
「今日は手話の練習をしたんだ」
「今日は街のゴミ拾いの奉仕作業をするはずだったんだけど、雨だったから事務所の清掃作業になったんだ。ぼくは丸めた新聞紙で窓ふきをしたよ」

 おかげで、昇平が事業所でどんなふうに過ごしているのか、ある程度はわかります。

 事業所には、昇平がとても苦手にしてきた、「ときどき大声を出す利用者」さんもいました。
 契約のために私が事業所を訪れたときにも、その人は何度もそばに来て、かなり大きな声でひとりごとのように何かを話していました。明らかにかなり重度な方で、昇平が言うには、ひとりごとの内容はゲームやポケモンのことが多いのだそうです。時々歌を口ずさんでいることもあるといいます。

 昇平はこれまで、そんなふうに「急に大声を出す人」「大声でひとりごとを言う人」が本当に苦手で、その人自身は嫌いではないのに、大声で騒ぐことが多いものだから、昇平のほうがパニックになることがよくありました。中学時代には、パニックのあまり大騒ぎを起こして、担任に怪我をさせてしまったこともあります。
 だから、事業所には大声を出す人がいませんように――と親子で願っていたのですが、やはり、そういう方はどうしてもいるようで、ここでも一緒になってしまったのでした。

 ところが、昇平は「○○さんが大声でひとりごとを言っても、ぼくは我慢して落ち着いていられたんだよ」と報告してくれました。
 もちろん気にはなるのですが、その人を見ていて、「自分までパニックを起こして大騒ぎをしたら、みんなに迷惑をかけてしまう、と気がついた」のだそうです。「事務所の人も、周りの人も、その人が大きな声で喋っても知らん顔で何も言わないでいるから、ぼくがわざわざ言うこともないと思った」とも「今日はスタッフの人が『もっと小さな声で』って注意してたんだよ。スタッフが指導するんだから、ぼくが何か言う必要はないんだよね」とも。
 これまで、繰り返し繰り返し、昇平にされてきた説明や指導が、やっと現実の形で実を結んできたんだな、と思って、ものすごく感動してしまいました。
 もちろん、我慢してスルーができた昇平のことも、たくさん誉めました。

 昇平は今はパソコンのタイピングをがんばっています。
 先日の模擬試験の評定も見せてくれたのですが、一応合格点だったものの、タイピングがD評価。ここをがんばればもっと成績が上がる、と自分でも思ったようで、一日の終わりにある「自己啓発」の時間にも、事務所のパソコンを貸してもらって、タイピングの練習をしているそうです。
 自分にできること、がんばれることがあるのも嬉しそうで、「パソコンがある今の時代に生まれてきて良かったなぁ」とまで言っています。
 たぶん、障害を持つ自分たちをサポートしてくれる人や組織や制度があることを、実感で感じて、「ありがたいなぁ」と思っているんだろうと思います。

 事業所に通い始めてまだ十日ほどなのに、急に大人になってきたように見える昇平です。

 

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