家庭

2010年8月23日 (月)

がんばった夏休み

 連日の猛暑に「暑い、暑い」と言っているうちに、昇平たちの夏休みも明日を残すだけとなりました。福島県の公立小中学校は、水曜日から2学期開始です。

 この夏休み、昇平は体験型の日々を過ごしました。
 私と一緒に電車で福島駅まで行く練習をしたのは、前回のてくてく日記で報告したとおりですが、それ以外にも、フリースクールに週1回のペースで通って、先生や他の子どもたちと交流したり、同じくフリースクールで主催したキャンプに参加して、野外炊飯をしてテントで寝て湖で泳いだり。盆前には郡山市の私の実家へ泊まりに行って、年下のいとこと遊んだり、地元の夏祭りに行って花火を楽しんだり。


 毎日の勉強もがんばりました。
 受験のために塾や夏期講習に通う、ということはなかったのですが、学校から出された宿題は毎日計画的にこなしていったし、家庭教師との数学の勉強もきちんとやりました。私とは、英語の長文読解を一緒に勉強しました。自力で完璧に解くのは難しいのですが、前よりは少しわかるようになったかな? という感じです。

 面白かったのは、社会科の宿題に出された「スクラップブック作り」。自分なりのテーマを持って新聞を読み、テーマに沿った記事を見つけたら切り抜いてスクラップして、感想を書く、という内容です。受験の際の小論文の基礎にもなる宿題なのかな、と思いましたが。
 新聞などまったく読まなかった昇平が、この宿題のために、毎日新聞を読むようになりました。彼のテーマは「エコロジー」です。
 とはいえ、ADHDもある彼は、不注意がひどいので、なかなか紙面から目ざす記事を見つけることができません。先に私が目を通しておいて、「この面にエコの記事があるみたいだよ」と言って、そのページの見出しを読む練習をしてもらいました。
 記事を見つけたら、切り抜いて、音読してからスクラップブックに貼り付けます。この「音読する」という内容が、彼にとって良かったと感じました。意味が理解できる、難しい漢字や固有名詞に触れる機会になる、社会的な内容にも触れることができる、もちろん、エコロジーへの日本の動きもわかります。
 8月半ばあたりから、地元の夏祭り関連の記事が増えて、エコ関係の記事がほとんど載らなくなってしまいました。そういう日は、「なんでもいいから、自分で面白そうだと思った記事を見つけて、お母さんに読んで聞かせること」としたら、それはそれで面白い勉強になりました。食べ物や生活に密着した記事を読むことが多かったですね。それだけわかりやすかったのでしょう。
 昇平は、行事や課題を通じて伸びていくタイプの子どもです。目標達成までのステップをちょうど良い高さにして、一歩一歩前進できるようにしてあげれば、その経験を通じて、ぐっと成長します。この夏休みは、そういう体験をたくさんできたので、結果としてとても大人になったように、私には見えています。


 ただ、大人になる、ということは、同時に新しい混乱や困難も招きます。
 彼なりに社会に少しずつ興味を持つようになって、新聞やテレビも以前よりよく見るようになりましたが、その結果、そこで目にした出来事やコメントに激しいショックを受けることも増えてきました。事件や事故を報道するテレビを観て、一人でしくしく泣いていることもよくあったし、お気に入りの漫画のキャラクターが死んだことに大ショックを受けた日もあったし、ネットの動画サイトに書き込まれたコメント(悪口の応酬)に「こんなひどいことを言う人たちがいるなんて!」と、泣きじゃくったこともありました。感受性が強すぎるのですね。ネガティブな人間の感情に非常に敏感で、傷つきやすい心をしています。

 こちらは、そういう昇平の特長を踏まえた上で、一つ一つの出来事への対処法を教えてきました。
 基本は「誰にだって苦手なものはあるのだから、苦手は無理に克服しようとするのではなく、嫌なものに近づかないようにする」ということ。
 「そんな甘いことを言っていてはダメだ! がんばって苦手を克服しなくては!」という考え方もあるし、その言わんとすることもわかってはいるのですが、生来の過敏性というのは、その人の身長が高いとか低いとかいうことと同様、生まれつきのものだから、いくら努力したところでそう変わるものではないのですね。それよりは、「傷つかない程度の場所まで避難する」「安全な場所から観察する」「それで少しずつ慣れることができたら、その時には、少しずつ離れる距離を小さくしていく」というステップを繰り返していくほうが、「苦手に慣れろ、慣れろ」「精神を鍛えろ!」と叱咤激励するより、ずっと早く、苦手に対応できるようになっていきます。

 それを一つ一つの出来事へ。
「このテレビの見出しは人目をひくように、こういう書き方をしているけど、実際にはこういう意味なんだよ」
「このキャラクターが死んでしまったのは悲しいし、主人公もそれにショックを受けているけれど、きっと主人公はそれを乗り越えて、死んだ人の分までがんばっていくんだよ。お母さんはそう信じてるよ」(昇平が何のコミックにショックを受けたかおわかりですか? 超有名な少年漫画なのですが)
「ネットの動画サイトに悪口を書き込むような人は、何か面白くないことがあってイライラしているのかもしれないね。だから、すぐに誰かを批判したくなるのかもしれないね。それをたしなめてくれる人もいるんだけど、それよりも、悪口を言う人のほうが書き込む回数が多いから、それでネットをやっている人全員が悪口を言うように見えるのかもしれないね。でも、○○○(別のコミュニティサイト)には、そういう意地悪を言う人はすごく少ないでしょう? 全員がひどい人なんかじゃないよね。嫌なことばかり書き込む人が多いところは、見に行かないようにすればいいんだよ……」
 そんな感じに。


 最近、昇平はこんなことを言うようになりました。
「ぼくは判断は素早いんだけど、思考する速度が遅いんだよね」(だから早とちりしたり、間違えたりするんだ)
「ぼくは体力はあるけど、精神力がダメダメ。精神的に弱いんだ」(自分の過敏性について)

 表現はどうしてもネガティブな感じになっていますが、それでも、自分というものを自分なりに客観視して、自分の苦手を把握するようになってきたところは、成長でしょう。
 まだまだ先は長いし、大人になっていけばいくだけ、出会うものも増えるから、それと上手につき合っていくためのスキルも身につけていかなくちゃいけないのですが、それでも、あきらめることなく自分自身と向き合い、上を目ざし続けている昇平は、本当に偉いと思います。
 ネバー・ギブアップ。
 昇平を見ていると、そんなことばがしょっちゅう浮かんできます。

 
 そうそう。
 この夏休み、昇平はWiiのトレーニングソフトの「Wii Fit Plus(ウィーフィット・プラス)」で、体を動かすこともがんばりました。
 協調運動に困難のある昇平なので、バランス感覚もあまり良くなかったのですが、ゲーム感覚で体を動かしているうちに、いつの間にかバランスが良くなってきました。リズム感も少しずつ付いてきたし。
 感覚統合訓練を受ける場がなくて、じれったい想いをしてきたのですが、こんな強い味方があったのか! と感激しています。
 毎日体重測定もできるので、食べ過ぎ防止になって、夏休み中にお腹がすっかりスリムになりました。今日、新しい服を買いに行ったのですが、今までよりワンサイズ細いジーンズを着こなして、とてもかっこよく見えました。


 いろいろあった夏休みも、もう終わり。
 夏休み中に培ったものを力にして、2学期を乗りきっていってほしいな、と思っています。


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2010年3月21日 (日)

車と接触する

 昨日の午後、自転車で床屋へ出かけた昇平が車と接触した、と電話がかかってきました。かけてきてくれたのは、接触した車を運転していた女性。ちょうど旦那が半休で家にいたので、急いで現場に行ってもらいました。

 結論から先に言うと、昇平はまったく無傷でした。自転車も無事。横道から大通りへ右折しようと停車していた車の直前に、昇平が左方から自転車で歩道を走ってきて(自転車通行可の歩道)、距離感を間違えたのか、ペダルと右足で車の前をこすってしまった、というもの。車は停止していたので昇平にまったく怪我はなく、逆に車の前の部分にペダルで傷をつけてしまったようでした。警察も呼んで事故処理してもらいましたが、相手の女性は本当に良い方で、車の傷に関しては「修理費はいいですから」と言ってくださいました。あ、ありがとうございます……!(感涙)

 自転車で家に帰ってきた昇平は、さすがにしゅんとしていて、開口一番「お母さん、ごめんなさい」。その顔を見たらかわいそうになりましたが、最近自転車に慣れてきて、安全確認がおろそかになっている場面も時々見られたので、この機に、その点だけを注意しました。
「自転車は慣れてきた頃が一番危ないんだよ。怪我がなくて良かったね」
「うん」
「これからは気をつけるんだよ」
「はい」
 その後、昇平は丸一日くらい、しょんぼりしていました。警察の事情聴取でも、相手の車に傷をつけたので、「弁償しなくちゃいけない」と心配していたようで、「真面目なお子さんですね」と警察の人が旦那に笑っていたそうです。大変なことをしてしまった、と彼なりに痛感したようなので、これからは安全運転にもっと気をつけてくれるのじゃないかと思います。

 ただ、こんな事件の中でも、ちょっと驚きの発見がありました。
 接触した後、相手の方が我が家に電話をかけようとしたときに、昇平は持ち歩いていたメモ帳を出して、そこに書いてあった住所と電話番号を見せたのだそうです。住所や電話番号を聞かれてもとっさには答えにくいから、と自分で覚え書きをして持ち歩いていたのです。警察の事情聴取の際にも、昇平はやはりそのメモ帳を見せ、警官の質問に受け答えをして、事故の状況を説明したようです。事情聴取の際に、旦那はあえて離れて見守っていたのですが、「非常に立派な態度だった」と感心していました。
 一歩間違えば大事故になりかねないところでしたが、怪我もなくたいした被害もなくすんだし、本人は非常に貴重な経験をしたので、これも良い勉強だったかな、と思います。

 とはいえ、母は寿命の縮む想いだったので、こんな経験は一度きりにしてもらいたいものです。(苦笑)
 

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2010年3月14日 (日)

家庭教師の先生と

 午前中、昇平の家庭教師の先生がいらした。今年度になって三十代の女性の先生になったのだけれど、とても熱意のある良い先生で、大当たり。そろそろ一年になるのだけれど、毎回、計算が速い、図形のが判断がすばらしい、などと良いところを誉めてもらえるし、大好きなポケモンの話も休み時間にできるので、昇平も喜んで熱心に勉強している。

 指導後はいつも、30分~1時間程度、先生と私で面談をする。最初のうちこそ昇平の話をしているけれど、後半はいつも先生が気になっている他のお子さんの話題。発達障害の傾向がある子は、どうしても個別指導が必要になる場合が多いから、家庭教師を頼むことが多い。診断のあるなしに関わらず、発達障害の視点で見ると合点のいくケース、指導のヒントが得られるケースが多いから、私の経験談がすごく参考になるらしい。親として昇平を育ててきたやり方が、とても参考になる、と言われる。

 今日も先生は「昇平くんが来年高校に入ってカテキョが終わっても、時々、昇平くんのお母さんのところに相談に来ようかしら」と冗談を言いながら、笑って帰っていった。
 実際には、私は親としての自分の経験談を話しているだけで、そこから指導のヒントを得ているのは先生なのだけれど、話を聞いてくれる人がいる、というのが、明日の指導の力になるのかもしれないな、と思った。先生だって、一人きりでがんばり続けるのは大変だろうから。


 なお、先生もプロなので、気になるお子さんの相談をすると言っても、その個人情報などは絶対に洩らしていません。最近このあたりのチェックが全般的に厳しくなっているようなので、念のために付け足しです。

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2010年3月 8日 (月)

順調です

 大変ご無沙汰しています。久しぶりのてくてく日記です。

 昇平はとても順調です。
 中身が大人になってきた、と言うのでしょうか。自分で自分をコントロールしよう、という気持ちがとても強くなってきて、いろいろな場面で自分を振り返っては、考えながら行動するようになってきました。
 友だちとのトラブルも激減しました。まだたまには怒ったり喧嘩したりすることはあるようですが、すぐに反省して仲直りします。集中力も伸びてきたようで、担任にも家庭教師にも「勉強に取り組む時間が延びてきている」と報告がありました。太りすぎないように運動をするんだ、と言って、休みの日には散歩にでかけたりもします。
 そして、なにより大きな変化は、小さなトラブルやミスがあったときに「ぼくはダメなヤツだ」「全然成長していない」と一瞬は落ち込むものの、すぐに「いや、そんなことを言っていちゃだめだ」「ぼくだって本当は成長しているよね」と言って、そこから巻き返しを始めるようになったこと。以前はそれを親など周囲の人間が言ってあげなくてはならなかったのに、今は自分で自分に言って立ち直るようになっています。たくましくなってきたなぁ、と思います。
 先週の木曜日には卒業式の予行練習があって、午前中2校時、午後2校時、計4校時分の長時間に渡ったのですが、それにもしっかり参加できたそうです。本当に、今年の1学期の混乱ぶりが嘘のようです。

 先日は親の会を通じて障害者の意識を調査するアンケートが来たので、昇平自身に答えてもらったのですが、あれもできない、これも難しい、と生活の困難を語る中で、たったひとつ「自分はやればできる人間だと感じますか?」という質問にだけは、「そう思う」とポジティブな回答をしてくれました。
 自分はやればできる――セルフエスティームが高い状態で保たれているのでしょう。それが、いろいろな場面での頑張りや努力につながっているのだと思います。

 昇平も4月からはいよいよ中学3年生です。このてくてく日記も、中学卒業までを一区切りにしようと考えているので、あと1年間です。高校生になるために、そして、その後の進路や就職というものを目ざして、いろいろ実際に行動したり準備したりする1年になるのだろうと思っています。
 相変わらず気まぐれな更新になるとは思いますが、あともう少し、私たち親子を見守っていただければ幸いです。 


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2010年1月29日 (金)

成長

 昇平は今日も歯医者でした。少し前に戻ってきたところです。
 詰め物が取れてしまったところを、先週削ってもらい、今週はそこに新しい詰め物が入りました。
 出発前に「今日も一人で治療室に入れる?」と聞いてみたら、「そんなの当然じゃないか~!」と余裕の返事。実際、呼ばれると「お、来た」と言って、さっさと一人で治療を受けにいってしまいました。……本当に成長したね。(感涙)


 今日の連絡帳には、担任からこんなコメントが書かれていました。

 「3学期に入ってから3週間が経ちました。月日の経つのは本当に早いですね。3学期になってからは、一度もパニックを起こしていません。本当に成長の跡がみられます。」

 学級では今、休み時間に使っていたパソコンを、授業開始時間に間に合うように、スムーズに切り上げる練習もしています。担任に目安の時間を知らせてもらい、励まされて、着実に効果が上がっているようです。家庭でも、食事やお風呂に呼んだときに、すんなり二階から下りてくるようになってきました。生活が落ちつき、気持ちが落ち着くと、こんなにも前向きに変化していくのかと、改めて感心しているところです。もちろん、担任の指導が昇平の「ツボ」にはまり始めた、ということもあるでしょう。
 残りの3学期も、この調子で落ち着いて過ごしてくれそうな気がしています。


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2010年1月25日 (月)

週末の昇平

 この週末の昇平の様子です。

【金曜日】
 以前治療した歯の詰め物が取れてしまったので、歯医者へ行きました。「呼ばれたら一人で治療室に入ってみる?」と聞いてみたら、ちょっと考えてから、「やってみようかな」。
 私は、呼ばれたらいつでも飛んでいく心づもりで待合室にいましたが、とうとう最後まで一人で治療を受けて、落ち着いた様子で治療室から出てきました。成長したものです。


【土曜日】
 午後からクラスのL子さんが遊びに来てくれました。本当はひとつ上の学年のT君も来るわけだったのだけれど、急用が入ったのか、電話をかけても不在。それでも、二人とも落ち着いていて、対戦ゲームを楽しみ、喧嘩になりそうな場面を上手に回避しながら、おっとりと和やかに一緒の時間を過ごしていました。すごいなぁ。


【日曜日】
 朝のアニメが観たいから、と自分で早起き。勉強も済ませて、自転車で散歩に出かけました。まあ、いつものように、コンビニと本屋巡りですが。
 昼過ぎ、ゲームで行き詰まってしまって、久しぶりにかんしゃくを起こしました。しばらく母に八つ当たりしていましたが、やがてなんとか怒りを収め、自分から別のゲームをやって気分転換。家庭教師の先生が来る時間までには落ちつきを取り戻していました。家庭教師の先生といつも以上に一生懸命勉強したのは、挽回したい気持ちがあったのかもしれません。 
 ただ、勉強途中で一度だけ、ゲームのデータの確認に来たので、「そんなのは後だよ!」と声をかけたら、昇平はにやっと笑って、「なにげに言うことを聞かない昇平であった」とナレーション風に一言。悠々とデータの確認を済ませて、また勉強に戻っていきました。こんな自己主張と反抗も、成長の表れのひとつなんでしょうね。(苦笑)


 一つ一つは小さな変化だけれど、昇平は確実に落ち着いてきて、確実に成長を続けています。
 それがはっきりした変化になるには、まだもう少し時間がかかるかもしれませんが、小さな前進は、見ていてとても嬉しいものです。


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2010年1月20日 (水)

12ー1月の報告

 明けましておめでとうございます。今年初めてのてくてく日記です。

 前回の「SENDAI光のページェント」の日記から、1カ月が経ってしまいました。
 その間に何があったかと言いますと――まず昇平が新型インフルエンザでダウンして、終業式に出られないままに冬休み突入。リレンザのおかげで数日で元気になったものの、今度は年末の大掃除で私が大忙し。正月には郡山の実家へ帰省して、親戚一同と賑やかに過ごし、家に戻ってきてやれやれと思ったら、今度は私が胃腸炎でダウン。一週間も寝込んで、やっとなんとか元気になってきたところ――という状況です。

 私が寝込んでいた間に三学期が始まりましたが、昇平は特に不安定になることもなく、落ち着いて学校生活を送っていたようです。家でも、起きられない私のために、食事を運んだり水を持ってきてくれたりと、いろいろ労ってくれました。
 小さなトラブルやパニックは相変わらずありますが、そこから立ち直る時間が以前よりとても早くなりました。休み時間に友だちとトラブルになっても、気持ちを切り替えて、授業は落ち着いて受けられているようです。本人の表情も明るくなってきました。本当に良かったと思います。

 今、昇平は新しく始めたネットゲームに夢中です。ネットの向こうの対戦者は実際の人間なので、思うように相手にしてもらえなかったり、一方的に負けたりして怒ることもありますが、以前「メイプルストーリー」をしていた頃のような混乱や一方的な怒り方は、とても少なくなりました。できるだけ落ち着いて、皆と仲良くゲームを楽しもうという姿勢が見られます。良いことです。
 正月の間に少し太ったのを気にしていて、休みの日には歩いて散歩に出かけます。一時間以上もかけて、町中の本屋やコンビニを回ってくるようです。距離にして4キロくらいは歩いているようなので、これも良い運動だと思います。
 ちなみに、散歩のお供はゲーム「ポケットモンスター・ソールシルバー」についてきた「ポケウォーカー」という万歩計形ミニゲーム機。これをベルトにつけて歩くと、歩数の分だけ連れ歩いたモンスターがゲーム機の中で成長する、というもの。クリスマスプレゼントに買ってあげたソフトですが、なかなか良いおまけがついていました。

 学校生活が落ち着くのに比例して、本人の気持ちも落ち着き、勉強や遊びに前向きに取り組むようになり、いろいろなことが良い方向に動いているのを感じます。三学期もこの調子でいってほしいと思っています。
 そして、春になればいよいよ三年生。中学校生活は、あっという間です。進路のこと、準備しなくてはならないこと、本当にたくさんあります。そのためには、本人はもちろん、親である私たちも健康でいなくちゃいけないなぁ、と思います。

 健康第一。

 今年の目標です。


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2009年12月20日 (日)

11年ぶりのSENDAI光のページェント

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 昨日、昇平と旦那と三人で仙台市へ行って、今開催されている「光のページェント」を見てきました。仙台駅前の青葉通りと定禅寺通りの巨大なケヤキ並木を60万個のライトで電飾するイベントで、写真のような金色の林ができあがります。下を通ると、金に輝くアーチの中をくぐるようです。

 前回、光のページェントを見に行ったのは11年前、昇平がまだ3歳の時でした。小学3年生だった長男と家族4人で、新幹線で仙台市へ……。
 昇平は診断を受ける直前でした。多動の絶頂期。新幹線の中でおとなしくしていられるわけもないので、私と旦那が交代で昇平に付き添って、MAXやまびこの中を前から後ろへ1階から2階へ、福島から仙台へ着くまでの間に何往復したやら。
 光のページェント会場になっている定禅寺通りの遊歩道でも、昇平は家族の私たちのことなど振り向くこともなく、一人でとっとことっとこ……。人ごみの中を見失わないように追いかけながら、頭上の光のトンネルも楽しむ、という難易度の高いことをやりました。夕食は待たずに食べられるファーストフード店でハンバーガーを。
 それでも楽しいひとときでした。旦那と私で交代して昇平について歩き、昇平の担当が終わると、長男とおしゃべりしながら光のトンネルを眺めました。黒い夜の中、ライトを連ねた木々の枝は、無数の金貨の雨を降らせているようでした。


 今回はもう長男は一緒ではありませんでした。関東で大学生をしているからです。
 前回は新幹線でしたが、今回は自家用車で行って、駅前から離れた駐車場に車を停め、まず仙台駅まで歩いていって、日中は駅前をフィールドワーク。デパート巡りをして、商店街を歩きました。
 その後、一番町のアーケードをずっと歩いてクリスマスイルミネーションを眺め、定禅寺通りで光のトンネルをくぐり、そこからまた一番町アーケードを通って、途中で夕食を食べてから、駅前の青葉通りへ。そこでも光の木々を眺め、また歩いて駐車場へ……。後で地図で確かめてみたら、道路だけで8Km近く歩いていました。デパートやゲーセンの中を歩いた距離も考えると、10Km近く歩いたのかもしれません。おかげで今日は足腰が筋肉痛です。

 昇平は歩きながらDS-iのカメラ機能を使って、街やイルミネーションの写真を撮り、ゲーセン巡りを楽しみ、デパートでは自分一人で文具売り場の階へ行って、シャープペンシルを選んで買っていました。デパートの中では「ここでは写真は撮っちゃだめ?」と私に聞いてきて、「店内の撮影はだめだよ」と言われると、ちゃんとそれを守っていました。
 光の遊歩道でも、見失うこともなく、はぐれることもなく。途中、私や旦那を記念撮影してくれたりもしました。夕食は仙台名物の牛タン定食でしたが、店内が混んでいてしばらく待たされても、文句も言わずにゲームをしながら待っていたし……。

 ああ、これが十年という歳月の結果なんだな、としみじみ思いました。
 本当にチョロ助で、一瞬目を離せばもういない、という状態だった昇平が、11年後にはこうして両親と一緒に歩き、危険も心配もなく光のトンネルを楽しむようになるのです。待つこともできるようになったし、両親を思いやってくれるようなこともしてくれます。しかも、10Km近い道のりを平気で歩いて、最後の頃でも走って先へ行けるくらい元気だったのです。体力もつきました。

 昇平が診断を受けたのは、前回光のページェントを見に行った直後のことでした。
 それからずっと、休むことなく地道な積み重ねを続けて、ここまで来ました。派手なことや特別なことは何もしてきません。ただ、昇平が安心して生きられるように、昇平にわかりやすい生活と、昇平が「できる」ための方法を最優先に考え、本当にたくさんの人たちの助けを借りながら、歩き続けてきました。
 てくてく、てくてく、11年間。


 降りそそぐような光のトンネル。
 そこをくぐり歩いていく昇平、そして私たち。
 心配なことや頑張らなくちゃならないことは、これからもずっと続いていくけれど、節目のようにこんな時を迎えることができたことを、とても嬉しく思いました。
 これからも、私たちは地道に歩き続けるでしょう。努力することを続けながら。楽しむことも続けながら。
 そうしてどこに到着するのか、それは私たち自身にもわからないのですが、それでも、時々こんなふうに素敵なものを見ることができるのならば、歩いていくことそれ自体が意味を持つのじゃないか、とも思います。


 間もなく2009年も終わります。
 いろいろなことがあった一年でしたが、過ぎてみれば、充実した良い年だったような気がします。
 来年もまた良い年になりますように――。
 夜空を彩る無数の金色を見上げて、そっと願いました。


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2009年10月27日 (火)

自分の場所でできること

 昨日の朝のこと。
 登校した昇平が学校から半泣きで電話をかけてきました。
「もうイヤだ。家に帰る」

 どうしたのかと思って話を聞くと、どうやらまたクラスメートのL子ちゃんが関係しているようです。でも、どうして? 先週の土曜日にL子ちゃんが上級生のT君と一緒に遊びに来てくれて、午後中3人で楽しく遊んだばかりなのに。
 すると、昇平「ちょっと待ってて」と一度電話を切り、今度は学年主任のH先生を呼んできました。先生の話によると、朝自習の時間にL子さんの指導をしていたら、無関係なはずの昇平が「もういやだ、家に帰る」と泣き出したとのこと。
 なにしろ、聴覚過敏があって場面認知が悪くて非常に繊細な昇平です。指導されているのは他の子でも、自分のことのように心に響いてしまうのですね。なるほど、と思いながら、昇平に、「つらくなっちゃったんだね。それじゃ、昇平くんとL子ちゃんの二人ともが落ち着くまで、別の教室にいるといいよ」と話しました。学級の隣には、こういう時のための避難所として、多目的教室があります。
 この頃には昇平も少し落ち着いてきたようで、「隣はイヤだ。図書室がいい」と言いだしたので、「それじゃ先生に断って図書室にいて、落ち着いたら教室に戻るといいよ」と言い聞かせ、昇平も、「うん」と承知して電話が切れました。

 それから30分後、H先生から報告の電話がかかってきました。昇平は図書室に行き、L子ちゃんは教室にいて、それぞれ落ち着いた様子になったとのこと。さらに、下校してからの連絡帳には、昇平が2校時目からは教室に戻り、後はL子ちゃんと仲よく過ごしていたことが書かれていました。
 昨日はたまたま担任が休みで、学年主任のH先生が彼らのクラスを見てくださっていました。昇平の言動にはさぞ気を揉み、二人とも落ち着いたので、ほっとされたことでしょう。昇平も、トラブルを乗り越えてL子ちゃんと仲よく過ごせたので、晴ればれとした顔で帰ってきました。


  ☆彡☆彡☆彡☆彡


 昇平が思春期に突入して、こういうことがしょっちゅう起きるようになりました。たいていは予想もしない出来事なので、即座に状況を把握して、判断、対処しなくてはなりません。昇平が学校に行っている間、携帯電話は手放せません。
 もし私が外で仕事をしていたら、とてもこれだけの対応はできなかったし、トラブルのたびに職場にも迷惑をかけただろうと思います。私が働くとしたら教育関係の職場です。相手の子どもに責任を持つ仕事ですから、とても昇平の子育てと両立はできません。
 だから、私は働いていません。いつでも駆けつけられるように、自宅待機しています。もちろん、用事や勉強のために出かけることはありますが。自分は「先生」ではなく「母親」であることを選んだんだなぁ、とつくづく思います。

 でも、そんなふうに、まったく家の中だけにいて、社会から隔絶されるのもつらいものです。
 家事をして子どもを育てているんだから、それで充分じゃないか、ともよく言われますが、やっぱりもう少し社会に関わる何かがしたい、と思います。家事や子育て以外の何か。私にしかできない何か。
 そう考えて見つけたのが、小説を書くことでした。
 家から離れられなくても、これだけは続けることができます。いえ、むしろ、ずっと家にいたほうが好都合です。
 作品を読んだ人が「面白かった」「楽しかった」と言ってくれると、とても嬉しくなります。「元気の出てくる物語ですね」と言ってもらえることもあって、そうすると、私自身もものすごく元気が湧いてきます。仕事とは言えなくても、書くことで、なんとなく社会に少し役に立っているような気持ちになれるからです。


 「人は自分に配られた手札で勝負をしなくちゃならないものなのさ」
 そう言ったのはスヌーピー。それを紹介してくれたのは、ニキ・リンコさん。
 そういうことなのだと思います。
 自分にできることを、自分の場所でやっていく。それが生きるってことでもあるのでしょう。


 昇平は、「今日はきっといい日になるね」と言って、また元気に登校していきました。
 今のところ、学校からトラブルの電話はかかってきていません。

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2009年10月11日 (日)

パソコンの故障

 今日は昼過ぎに突然昇平のパソコンが故障しました。
 特に原因もないのにモニターがいきなりブルースクリーンになり、その後、電源を入れ直しても画面に何も映らなくなって、昇平が大パニック。すぐ修理に出すし、その間、夏休みのようにノートパソコンを貸してあげるよ、と言っても、処理速度が遅いのでそれでは楽しくない、と怒る怒る。それでも、家庭教師の先生がいらっしゃったので、なんとか勉強を始めたのですが、やはり文句の言い通しで……。

 ところが、しばらく休ませた後でスイッチを入れたら、パソコンが正常に立ち上がったものだから、昇平は一転してご機嫌になり、後は落ち着いて勉強したし、当たり散らした先生や家族にもちゃんと謝りました。
 落ち着けばわかるし、怒っている間にも本当はわかっているんですよね。故障は誰のせいでもないし、自分が周囲に当たり散らすのは正しくないということは。ただ、その事実がどうしても受け止めきれなくて、パニックになってしまうのです。予測不能な悪い出来事の急襲は、彼の一番苦手とすることです。

 弟に電話して聞いてみたところ、熱でパソコンが動作不良を起こしたのだろう、とのこと。昇平は一度にずいぶんたくさんのアプリケーションや動画サイトを立ち上げるし、すぐに使えないのが嫌で、使っていない間も何時間も電電源を入れっぱなしにしておくので、付加がかかりすぎたようです。夏にも暑さで一度不具合になっていたので、部品がもう弱っているのだろう、ということで、修理と代替機を考えることになりました。
 これに懲りて、昇平も正しいパソコンの使い方を覚えてくれるといいなぁ。

 それにしても、パソコンって、どうしてこう突然壊れるんでしょうね。毎度ながら、本当に心臓に悪いです。
 やはり、中古でいいから、非常用のマシンを一台常備しておいたほうが良いのかも。

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