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2008年6月16日 (月)

部活の早退を決める

 木曜日の夕方、突然、学校にいる昇平から電話がかかってきた。開口一番、「先生に代わります」。
 何事!? と焦っていると、電話口に女の先生が出た。
「パソコン部を担当しているMです」
 昇平の部活の顧問の先生だった。
 いったいどうしたのだろう、とドキドキしながら話を聞いていたら、
「実は今、パソコン部ではパソコン検定試験に向けて皆で取り組んでいるところなのですが……」

 要はこういう話だった。
 今、パソコン部では夏の検定試験に向けて全員で練習問題やタイピング練習を始めている。時間にして1時間から1時間半の間、皆、ゲームやネットサーフィンなどはいっさいやらずに真面目に課題に取り組み、自由時間は部活終了前の10分か15分くらい。ところが、昇平にはそれが我慢できないらしい。怒ってしまったり、大声を出したりするので、他の部員がびっくりして「なんだこいつは?」という感じになっている――。

 ああ、なるほどね~、と思った。
 パソコン部では今年部員たちに検定試験に挑戦させる、という話は聞いていたけれど、それがいよいよ始まっていたんだ。
 状況も、先生の話でとてもよくわかった。しんと静かに練習や課題に取り組む時間が1時間から1時間半、その間、お楽しみの要素はまったくなし……これはさすがに昇平にはちょっと無理だわ。(苦笑)

 以前と比べればずいぶん改善されてきたけれど、昇平はやっぱり集中時間が短い。自分が好きなことには驚くくらい長時間取り組むけれど、そうでないこと、特に勉強や練習といった類のことになると、とたんに集中しにくくなる。もちろん、誰でもそういう傾向はあるけれど、昇平の場合は顕著で、テスト勉強でも宿題でも5分から10分で気が散って別の物に手を出したり、おしゃべりを始めたりしてしまう。声をかけて勉強に引き戻しても、やっぱりまた10分たたないうちに気が散る。一度にひとつの課題を続けるのは30分が限界。その後はゲームなどで一息入れないと、次の課題に取り組むことができない。本当にADHDらしいなぁ、といつも思うけれど。
 その彼に1時間以上の検定練習では、とても我慢できなくなって、怒り出したり、「いつまでやらなくちゃならないんだ!」と騒ぎ出したりするのは目に見えている。

 そこで、集中力の限界の話をして、もっと活動の時間を短くしてもらえるかどうかM先生に聞いてみた。
 確かに長い課題は嫌がるかもしれないけれど、だからといって、検定試験が終わるまでまったく部活に出ない、というのも非常に残念な気がする。授業でも休み時間でもない学校の時間から得る経験は貴重だと思うし、本人だって部活に参加している、という気持ちは持っているし。周りの先輩たちが検定のために真面目に取り組んでいる様子を見ることだって、今後、本人が検定を受けることがあったら、きっと参考になると思うし。
 M先生の方でも昇平には「早く帰っていいよ」と話してくださっていたらしい。ただ、本人が「部活に最後まで出るってお母さんと約束したから」と言うので、私に相談の電話をかけてきた、というわけ。

 そこで、検定が終わるまでは、昇平を適当なところで早退させてもらうことにした。ただし、その時間は昇平と相談して決め、その時間まではちゃんと部活に参加すること、活動内容も一人だけゲームなどで遊ぶのではなく、他の人たちと同じように課題に取り組むこと、迷惑にならないように静かにすること、を本人と約束してもらうようにお願いした。
 M先生の方でも、「昇平くんは課題のためのノートを持ってきたりして、部活動に意欲は持っているようなので、それがいいと思います」と言ってくださった。
 時間にして30分間くらいが限界かな、と考えていたけれど、帰宅した昇平に聞いてみたら、「1時間がんばる」ということでM先生と約束してきたらしい。私の予想よりちょっと長かったから「大丈夫かな?」とは思ったけれど、本人が約束してきたことなので、「それでがんばるんだよ。ちゃんとみんなと同じように課題をやって、帰るときには、まだ他の人はやっているんだから、静かに帰ってくるんだよ」と話した。

 「ごめんね、部活、途中で帰ってくることになっちゃって」と昇平が後で謝ってきた。部活動には最後まできちんと参加しなくちゃいけない、という気持ちはあるのだ。
 「しょうがないよ。1時間半も検定の練習ってのは、さすがに昇平くんにはきついからね。でも、もっと大きくなったら、きっともっと長い時間がんばれるようになるからね」と言ったら、「ありがとう」と返事をしてきた。

 連絡帳で担任の岩沢先生にもその旨の報告をしたら、顧問のM先生からすでに連絡があったということで、「自分のできる範囲で活動に参加すればいいと思います。」と暖かい返事が書かれてきた。
 「できないこと」に注目するのではなく、ここまでならできる、という「できること」に注目してくれること。これのおかげで、昇平は昇平なりに自信を持てるようになるし、がんばる力も育っていく。
 複数の先生方がそういう目で昇平を見てくれていることが感じられて、とても嬉しかった。

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