発達障害をめぐる親のジェネレーションギャップ
ヤマボウシ(2022年5月30日撮影 伊達市立図書館駐車場)
先週の金曜日に、伊達市自立支援協議会こども部会の親の会連絡会議が市役所でありました。
その前日には発達障害の親の会の定例会が、土曜日には親の会が定期的に開催している学習会が、どちらもZoomを使ったオンラインで開催されました。
そんなふうに親の会の人たちと集まっていると、最近よく感じるのが「ジェネレーションギャップ」です。
私たちのような、子どもがもう成人年齢になっている親と、子どもがまだ幼稚園や小学校という若い親とでは、環境も状況もいろいろ違うなぁ、と痛感するのです。
私たちが子育てしていた時代は、発達障害というものの存在がやっと日本で知られてきた時期で、特別支援教育の体制が整っていくのと一緒に子育てしてきたような状況でした。
発達障害ってなに? ADHDって? 自閉症って、LDって? 親は子どもにどう接すればいいの? 学校には何をどうお願いしなくちゃいけないの?
わからないことだらけで、とにかく必死で情報を集めて、学んで考えて走り続けました。
障がいがある子を預かってくれる場所はなかったし、学童に行けばトラブルが頻発するから、放課後は家で子どもを見るしかなくて、母親は子どもが小学校や中学校を卒業するまで家庭にいることも多かったです。
私もパートや教育関係のアルバイトをしていたけれど、同居の義父母では次男の面倒が見られなくて、仕事は諦めて専業主婦になりました。
今は放課後デイサービスという居場所があちこちにあって、学校が終わると送迎してくれるところも少なくありません。
子どもの障害の程度や家庭環境などにはよりますが、障がいのある子の親でもフルタイムで働きやすくなったことは確かです。
学校でも特別支援のニーズが高まっていて、特別支援学級のクラス数がとても増えています。
全体では子どもの数が減っているのに、特に発達障害に特化した情緒障害学級が急増しているようです。
私たちの頃は、やっと情緒障害の学級が知的障害の学級と区分されて独立した頃で、先生方も半ば手探りで指導法を確立している時期でした。
それはそれで、親も先生方も熱意がある人が多くて、専門家や知識の不足はお互いの情報交換で補ったり、海外の進んだ取り組みや新しい指導法を学ぼうとしたりと、とても熱くて積極的な時代でした。
だから「その頃は情報も指導法もまだ充分じゃなかったから大変だったでしょうねぇ」と若いお母さんたちから気の毒がられると、ちょっと違うんだけれどな……と思ったりもするのですが(苦笑)
でも、とにかく今はもう、発達障害に関しては基本的な知識が行き渡っているし(ただ、本当の意味で充分理解されているかどうかは疑問がありますが)、学校では特別支援教育が行われるのが当然になっているし、家族のほうでも子どもに合った教育を求めるし、放課後デイという居場所はあるし、学校の勉強を補うための発達障害に特化した学習支援施設も増えてきたし……。
私たちが子育てをがんばってきた時代とは、環境も状況もずいぶん違っているんだなぁ、と実感させられるのです。
そんな中で、私たちの子育ての経験は、今の若い親たちに何か参考になるんだろうか?
そんなことも考えてしまいます。
これって、祖父母の世代と親の世代の、一般的な子育てに関するギャップと似た構図なのかもしれません。
祖父母と今子育て中の親とでは時代が違うから、祖父母が「ああしたほうがいい」「自分たちの頃はこうだった」という経験談が、今の親たちには通じないというか、響かないというか……。
それと同じことが「発達障害のある子の子育て」という世界でも起きているのかもしれないです。
だから、若い親たちと交流する場に出ると、ジェネレーションギャップを感じてしまうのかも。
「私たちの頃とは時代が違うんだわね」とは、相談会の手伝いに来てくれたNさんが、相談会の後でぽつりと洩らしたことば。
彼女はうちの次男より5つ先輩のお子さんのお母さんで、地域で長年発達障害の親たちのとりまとめをしたり、子どもたちのために活動をしてきたりした方でした。
「私たちはもうそろそろ引退なのかも」と言ったのは、また別の、やはり親の会など複数で役職を務めているKさん。
やっぱり若い親たちと自分たちの間のギャップを感じているようでした。
かくいう私もそうであるわけで。
「自分たちも苦労してきたから、困っている親がいたら手伝ってあげたい。自分たちが経験したことが役に立つなら、とは思っているんだけどね」と言いながら、思うように力になれなかったという顔で帰っていったNさんを思い出しています。
私たちの経験はもう役に立たない──もしかしたら本当にそんな時代になってしまっているのかもしれません。
それでも、私たち自身は今でもまだまだ悩みの中で、子どもは成人したけれど、今もまだ子育ては続いています。
社会性に困難を抱えていたり、大人になっていくのがゆっくりだったりする子どもたちなので、今の私たちの一番の関心事は、「子どもの就労や自立」と「親亡き後の子どもの将来」です。
これに関しては、今でも社会制度は十分ではないし、福祉政策なども毎年のように変わっている状況なので、私たちは学び続けなくてはいけないし、考え続けなくてはいけません。
同じような子育てをしている親同士のネットワークは重要だし、子どもが結婚してそこに子ども(=孫)が生まれたら、その子ども家族との関わり方という課題も発生してくるから、なおさら同じ立場の親同士のつながりは大事になってくる気がします。
同じ立場同士わかり合えるという、ピアな関係のニーズは続いています。
若い人たちの子育ての悩みは若い人たち同士や、学校や病院や支援施設のような専門家との関わりに委ねて、私たちは私たちの年代の課題に取り組むべき段階に来ているんだろうか……?
みんなフルタイムで働いているから、親の会活動に新たに加わる親も減っているわけだし……。
答えはまだわからないけれど、そんなことを考えている今日この頃だったりしています。
ある日の青空。悩んだときに空を見ると落ち着きます。ふぅ
« 「勇者フルートの冒険28」第43章更新 | トップページ | 東沢バラ公園 »
「発達障害」カテゴリの記事
- 息子がホクロを取る手術を受けました(2022.12.20)
- 発達障害があっても投票に参加する(2022.07.11)
- 発達障害をめぐる親のジェネレーションギャップ(2022.06.06)
- トライアンドエラー~息子バス通勤に挑戦する(2022.03.28)
- お弁当と偏食の思い出(2022.01.31)
ご苦労様です。
『うんうん。』と感じながら読んでました。
今も昔も発達障害という物をもっていても、なくても『話す場所』は大切で
特に「私の子は他とは違う」と感じている親にとってのママ友は大切、とっても。
でも、自分でもそうだけど
若い親たちとは、ちょっと違うよね。と感じていますので
何も無理する必要もなく、朝倉さんたちのメンバーさんの思うままでいいと思う。
ただ、行政の人の間のクッションとしては、重宝されるのだろうな。
『育ててきた。』というのは
とてつもなく、凄い事なのです。
今の方って、知識が豊富なんで
「こうなんじゃない?」とアドバイスすると
「え?本にはそう書いてあったから、そのように・・・」となる場合が多いのでは
『じゃ、なんで質問したの?』って気になりますからね。
こっちとしては疲れるのだろうなぁ・・・・。
反論する気もないだろうし(^^;
私達の時って、手探りだったから「うん、じゃぁやってみる!!」って人多かったきがするわ。
十人十色・・・・そこを分かって欲しいなぁ・・・・うん。
投稿: さゆた | 2022年6月13日 (月) 12時34分
>さゆたさん
ありがとうございます。
こっちが伝えようとすることに若いお母さんが反論するとか馬鹿にするとか
そういうことでは全然ないんです。
ただ、こちらが苦労して少しずつ覚えたり身につけてきたりした知識やノウハウを
むこうはものすごく初期の段階でもう当たり前のように知っている
それだけに、こちらがアドバイスできることがない──という感じなんです。
サービスに対しても、私たちの頃にはなかったものが
今はあるのが当たり前で
そういう面からも、私たちにアドバイスできることがもうない、という感じ。
対立しているのではなく
親としてのスタート地点がすでに違っている、と感じることが多いんです。
それはとてもいいことだと思うし
私たち自身も目ざしてきたことではあるんだけれど
(発達障害に関する知識や福祉の充実をずっと願って訴えてきたわけだから)
私たちが先輩としてできることってあるのかなぁ、と思ってしまった
ということです。
ただ、上の記事を書いた直後に
市のソーシャルワーカーを通じて
「先輩の親の話を聞きたいというお母さんがいるんですが」
という問い合わせを会に受けました。
ああ、まだそういうニーズはあるんだ、と思った次第です。
昔、私たちが提供できたことと
今、私たちが提供できること(求められていること)は違ってきてるかもしれないけど
私たちにできることがあるなら、力になっていきたいな
と思ってはいるんです。
心配してくれてありがとう。
やれることしかできないんですよね、結局。
まずは子どもと自分たちのために活動をしていって
そんな私たちに「教えてほしい」と言われることがあったら
できることならばそれに応えていく、
そんな感じでいいんだろうなぁ、と……。
とりとめなくて何なんですが、そんなことを考えています。
投稿: 朝倉玲 | 2022年6月13日 (月) 16時13分
(^^)
朝倉さんがいる会は○ーマスでしたっけ。
とっても活躍してる会ですよね。
こちらでは○さゆりの会が大規模なんですが
定期的に講演会をやられているようです(広報に入る)
広報の方にも「発達障害をかかえている、お子さんと保護者の方のお話会」ってのもあるし
昔に比べると話す機会、出会う機会も多いのだろうな。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」魔法の言葉を聞きたいのだと確信してます。
投稿: さゆた | 2022年6月14日 (火) 12時22分
お疲れ様でした。
親の会に所属した事はない私です。
主催の講演会や集まりに参加させていただいてきました。
とても助かりました。
先駆者の親御さんのお話を聞いていると、今はとても有名になっている先生方と
まだお若い頃から繋がって、一緒に頑張って成長してきた…という自負と言いますか
自信を感じることがありました。
「私たちの時代はパソコンになる前の頃だったのよ、始まりは^^;」って、おっしゃって。
羨ましくもありました^^;
そういった方々が行政に掛け合って下さったり、多くの場所へ働きかけを行ってきて下さったおかげで
その後の親御さんたちは恩恵を受けてきたことがたくさんあります。
私もその一人です^^
それでも「やってみないと分からない」事は多くて、同じ障害名でも一人一人は違うし
合う療育もあれば合わないものもあります。
だから経験談や工夫の方法を聞く機会は貴重で、それらを求めて参加できそうな集まりに
出て行ったものでした。
私の頃に比べ、今のお母さん方はスタート地点で知識を得る場があり、選択肢もあります。
地域差はあれど行政の支援も格段に良くなっていると思います。
それ故に、ある程度先を歩くお母さん方の結果を知る事が出来るし、知りたくもあるのかな(当たり前ですが)。
結果と言うのはお子さんが今どうされているか(どうなったか)という事です。
自分が望む将来像になるには、どういった療育(支援)を受ければ良いのか…。
自分は何をしてあげるべきなのか…。
少しでも失敗を回避してあげられるなら等々、色々考えたものです。
子供の失敗もですが、自分の支援が良くない結果になる事を恐れていたと思います。
少し先の将来さえ想像できない事が多く、不安な気持ちは常にあったので
成人前後の話しが聞けるのは、貴重でありがたかったです。
試行錯誤して壁にぶち当たったり、そういった事も多くありましたから
経験談からヒントを得たり、自分の子供には「ここを少し変えてアプローチしたらどうだろう」と
アレンジして試してみたり。
そういった考えが浮かぶのも先を歩くお母さん方から話を聞けてたからこそ、です。
講演会で聴く先生方のお話とは、また違ったものでした。
う~んっ。
文章が下手で上手く表現できてないのが歯がゆいですが^^;
今まで本当にありがとうございました。
そしてこれからも…。
代表してお礼を言わせて下さい^^
投稿: プーミンママ | 2022年6月15日 (水) 12時03分
>プーミンママさん
コメントありがとうございます。
なんだかいろいろご心配かけてしまったような気がします。(^^;;
落ち込んで「もういいや」って思っているわけじゃないんです。
悲しんでいるわけでも怒っているわけでもないです。
それこそ、なかなかうまく表現できないんですが
今までと役割の在り方が変わってきたかも……と感じている。
そんな感じなんです。
感謝されると嬉しいし、
少しはお役に立てていたのかな、と思うと
自分自身も元気になります。
ただ、その役に立つやり方が、これまでと違ってきたかもしれない。
そんな感じです。
求められたときに、自分たちの経験を伝える。
それでいいのかもしれない、とか……
ん~、やっぱりうまく書けません!
ただ、これまでも親の会の役員などをして相談に乗ってきた人たちの多くが
今、同じようなことを感じているみたいだ、というのを
書き留めておきたかったんです。
あと5年~10年くらいしたら、今感じているこれがなんだったのか
うまく表現できるようになっているかもしれません。(^^;
投稿: 朝倉玲 | 2022年6月16日 (木) 13時34分
朝倉さんが、がっかりしている…といったようには捉えていません^^
大丈夫です、安心して(?)下さい。
でも、上でも書いているように上手く表現できなくて…^^;
疲れは取れましたか?
週末は夏日になるようですから気を付けないと…です^^;
投稿: プーミンママ | 2022年6月16日 (木) 16時32分