長男の話
このブログでよく「息子」と書いているのは二男のこと。
我が家にはもうひとり息子がいます。
長男は二男と6歳違い。
高校卒業後、関東の大学に進学して、さらに1年間調理師の専門学校へ行ってから、関東で就職しました。
今も関東で生活しています。
最初の就職は資格を生かして飲食関係の職場でしたが、労働環境が良くなくて転職。
次の職場は最初は好調だったのですが、店が経営方針を転換したために労働環境が悪くなってしまい(飲食業界あるあるのようです)、長男は飲食業に見切りをつけてビジネスホテルのフロントマンに転職しました。
調理師からホテルのフロントマン。
かなりの方向転換でしたが長男には合っていたようで、「ホテルの仕事は好きだし、お客様と接するのもけっこう楽しい」と言います。
もちろんいいお客様ばかりではないし、いやなことや困ったことも起きるようですが、なんとか対処しているようです。
その後、新型コロナの影響で宿泊業界は大ダメージを食らいましたが、ビジネスホテルは一定の利用客があるようで、どうにか乗りきっているようです。
あのまま飲食業界にいたら、結局店が営業休止に追い込まれて、解雇されたか食べていけなくなったのでは、と思うので、早めに転職して正解だったと思います。
緊急事態宣言のせいでずっと会うこともできませんでしたが、つい先日やっと帰省することができて、元気そうな顔が見られて安心しました。
ところが、先週の木曜日、関東で強い地震がありました。
長男の勤務するホテルは東京都内、しかも長男はそのとき夜勤中だったのでとても心配しましたが、幸い震度4のエリアだったので被害はなく、無事も確認できてほっとしました。
ただ、その後が大変だったようです。
彼の勤務地はビジネス街。
しかも駅の目の前のホテルなので、地震で帰宅困難になった人が宿泊に殺到して、対応に一晩中てんやわんや。
夜勤のスタッフは全員、休憩を取ることもできなかったし、翌朝もJRが止まった影響で日勤のスタッフが遅刻して、さらに残業までしたのだそうです。
それでも、仕事明けに「こんな状況だったんだよ」とよこした電話の声は、疲れていても充実感があって、ああ、この仕事は本当に嫌じゃないんだな、と思わされました。
お疲れ様。
乗り切れて良かったね。
長男からの電話を切った後、ふと、以前にした会話を思い出しました。
義母の仏事のときのことだったと思います。
長男と、長男より一つ年上の甥っ子がいて、たまたまそのときには二人とも転職の就活中でした。
二人とも違う職種への転職を考えていて、
「これまでやってきたことは全然役に立たなくなるんだけどね」
と自嘲気味に言うので、
思わずこんな話をしました。
「よく言われることではあるけれど、人生に無駄な経験なんて何もないんだよ。
次の職場には直接役立たなかったとしても、別のところで役に立ったり、思いがけない場面でそれが生かされたりするんだから」
と。
私自身も、大学では小学校の先生になる勉強をしてきたけれど、結局学校の先生にはなりませんでした。
卒業後、教育関係の仕事には就いたけれど、結婚を機に辞めてしまったし、後に塾のアルバイトをしたけれど、それも家庭が大変になって続けられなくなったし。
でも、その経験は、自分の子育て、特に二男を育てるのに本当に助けになりました。
発達障害はなかなか理解が大変なのですが、それでも、学校で教わったこと、実際にふれあってきた子どもたちのこと、いろいろ思い出すと、自然と「こうした方がいいのかもしれない」と気がつくことができたのです。
紆余曲折はあったけれど、二男は曲がることもなく成長することができて、今では就労支援事業所に毎日通って働いています。
教育関係の勉強をしてきたことは、仕事にはならなくても、人生の無駄にはならなりませんでした。
そんな経験談も長男と甥っ子にしてから、さらにこう話しました。
「だから、やっぱり人生に無駄な経験なんてないんだよ。
でもね、ひとつだけ、学びや経験が無駄になってしまうケースがあるんだ。
それは、『自分がこれまでやってきたことは意味がなかった』と自分で決めつけてしまうこと。
意味がないと思ってしまったら、それが生かせる場面に出会っても、役立てることを思いつけないからね。
だから、たとえ違う職種に就いたとしたって、自分がこれまでやってきたことは、胸を張って大事にしていいんだよ。
きっといつか、どこかで何かの役に立つんだから」
うん、そうだね……と長男と甥っ子はうなずいていました。
その後、長男はホテルのフロントマンになって今にいたるのですが、話を聞いていると、飲食業界にいた経験は仕事にも役に立っていると思うことがよくあります。
お客様の様子に目配りすること、お客様に気持ちよく利用してもらうこと、喜んでもらうこと。
このあたりは飲食業界でしっかり鍛えられた基礎のような気がします。
次の業務内容を念頭に目の前の複数の作業の段取りをつける、というのも、忙しい飲食業界でまず養われたことのような気がします。
人生には無駄なことなんてないんだから、本当に、いろんな経験をして豊かな人間になっていってほしい、と願っています。
【おまけの写真】
カランコエの二番花。花数が増えてきました。
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