自分の発達障害を理解していく
先日、息子がこんなことを言い出しました。
「ネットにはよく『わからない』『自分は物事が見えてない』と言う人がいるけどさ、私からすれば、その人たちは私よりずっといろんなことを知っていて、物事もよくわかっているように思えるんだ。それに比べて私は、いろんなことがわかってないし、見えていないことも多いから、だから、その分いっしょうけんめい頑張っているような気がする。頑張らないと見えないから」
最近、彼はこんなふうに自分について考えることが増えてきています。
性格判断をしてみたり、他の人の言動と自分を比較して違っているところや同じようなところを考えたり。
「自分は何者なのか?」という自分探しをしている最中なのだと思います。
そういう年頃です。
SNSに流れてきたADHDセルフチェックのようなものをやっていたこともあります。
自分で自分を客観視するのは得意ではないので、そういうときにも私に確認してきます。
以下はその時の彼と私のやりとり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「私は子どもの頃はチョロ助さんだったんだよね?」
「そうだね。でも、今はもう君を見てチョロ助と思う人はいないだろうね。行動は落ち着いてしまったから。ただ、中身はまだちょっとチョロ助かもね」
「中身?」
「だって、君はゲームの時にはものすごく状況判断も行動も速い。普通にスマホ画面の文章を見ていたって、私が読み終わる前に君はもう読んで理解して画面を切り替えてる。行動は落ち着いても、頭の中は高速なんだろうね」
「高速なところ『も』あるんだと思う。いつも早くわかるわけじゃないから……。この不注意で周りがよく見えない、っていうのは私に当てはまってるかな?」
「それも小さかった頃はね。今も周りがよく見えてないんだろうけど、それは見えている範囲が狭いからだよね。興味があることしか見ていないから、周りで何が起きているのかわからないんだ。それはADHDというよりは自閉スペクトラム、自閉症のほうの特徴だね。自閉症は興味の対象が『これ!』と限定されているから、それだけを見つめてとことん進んでいく感じ。それに対して、ADHDのほうは、興味の対象があっちこっちに移っていくから、気が散って周りがよく見えなくなる感じかな。うまく集中できないんだよね」
「そうか~。だとしたら、私は自閉症のほうだ」
「君はADHDと自閉症の両方を持ってるからね。そして、さっきも言った通り、ADHDの特徴のほうは外にはもうほとんど出てないから、自閉のほうが目立つようになってるんだね。ただ、お母さんも今までいろんな発達障害の人を見てきたけど、ADHDだけ、自閉症だけ、って人は誰もいなかったな。みんな両方の特徴を持ってて、その割合が人によって違ってるんだよね」
「ふ~ん」
「それと、君は両方の特徴を持ってるおかげで、得していることがあるよ。ADHDが強い人は部屋の片付けが苦手だけど、君は自分の部屋をすごく綺麗にしてるよね。それは自閉症の人の、きちんとしているのが好きな特徴のおかげだと思うな。それから、自閉症が強いとひとつのことに集中しすぎて、そこから頭が離れなくなっちゃうけど、君はけっこう切り替えが得意だよね。例えばゲームだと、君はひとつのゲームをとことんやりこむんじゃなくて、同時にいくつものゲームを平行してやって進めていくもんね。ゲーム以外でも、何か予定していたことができなくなっても、『ま、いいや』ってすぐ切り替えられるし。それってADHDのほうの特徴なんだと思う。二つの障害の特徴の弱点を、お互いの強みで補い合ってるんだよね」
「そっか~。私は自閉症とADHDのハイブリッドなんだ」
「うまいね、その言い方! ただし、自閉症もADHDも、仕組みは違っていても、周りがよく見えないという特徴は共通してる。これはどっちでも補い合うことができない弱点だから、前に君が言ったように、頑張って見るようにしないと周りが見えてこないんだよね」
「うん、私は頑張らないと周りのことが見られない」
「疲れるとは思うんだ。発達障害でない他の一般の人たちは、周りの様子が自動的に入ってくるのに、君たちは手動でやらないと入ってきてくれないんだから」
「他の人は自動的に周りが見えるの?」
「うん、そういう人がとても多いよ。今そこで何が起きているのか、とか、その人がどんな気持ちでそういうことを言ったりやったりしたのか、とか、自動的に入ってきて、わかっちゃうんだ。でも、君たちはそれが苦手。だから、意識して自分から周りを見なくちゃわからないんだよね。大変だとは思うけど、それを続けていくと、少しずつ経験が溜まっていって、前より楽に見えるようになっていくと思うよ」
「わかった。これからも頑張ってみる」
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我が家では彼が小学校高学年になった頃に障害の名前を教え、中学生の頃には、彼に理解できる形で障害の説明をしました。
だからといって、彼が自分の障害を完全に理解できたわけではなく、折に触れて少しずつ説明を重ねてきたわけですが、25歳になった今では、こんな感じのやりとりと理解ができるようになりました。
一番嬉しいのは、自分に障害があっても、それを自分自身の一部として受け止めて、悲観的にも投げやりにもならずに、「だから、弱点を補うのにこうしよう」とか「障害があっても、こういうところの自分はすごいよね」と思うことができるようになったことです。
自分で自分を好きでいられること。
それは、二十数年間をかけて、私たちが彼の中に育んできたものです。
今日も彼は事業所へ「出勤」していきました。
月曜日なので内職ですが、真面目に作業をこなしているそうです。
火曜日と木曜日と金曜日は、チームで施設外の工場へ仕分け作業に行きますが、作業にはすっかり慣れたし力もあるので、周囲からあてにされていて、「役に立っている自分」を実感できて、とても嬉しいようです。
「行ってきます!」と元気に家を出て、「ただいま帰りました!」と明るく帰ってくる。
そして、今日どんな作業をしたのか報告してくれる。
そんな日常と彼の成長がとても嬉しいこの頃です。
【おまけの写真】
先週行った福島市のあづま総合運動公園のバラ園の、まだ紹介していなかった花の写真です。(冒頭の写真も)
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昇平君、日進月歩ですね。素晴らしい(^^)
大人になっても、自分が分からない人は多いです。私も人の事言えないし
次男とのやり取りは、たまに『??』ですれ違います。
あっちも私をそう思っているでしょう。
頑張らなくていいです。自分を好きでいて欲しいと思います。
先日きのこの手帳更新の際
障碍者年金の話を聞きました。
まだ、手続きは先になりますが
これまでの歩みを上手く説明できないといけないようで
手続きできない人もいるだろうなぁ。
外国籍の子も多くなったと感じてます。
今、やるだけやってみようか・・・という気にはなってますが
書きながらしんみりしてしまうかも(^^;
投稿: さゆた | 2021年6月 8日 (火) 15時34分
>さゆたさん
コメントありがとうございます。
進め進め、行け行け、とハッパをかけるようなことはなかったのですが
気がつけば、彼自身のスピードで成長していた、という感じですね。
特に、自分の特徴や特性を理解し始めてからの進歩はめざましいです。
障害のあるなしに関係なく、自分を知るって大事なことですね。
年金の申請はけっこう大変ですよね。
生育歴を、ブランクなく全部書かなくちゃいけないし、
どんなふうに障がいがあって大変だったか、というのをアピールする必要がある。
普段ポジティブに我が子をとらえている親には
精神的にもちょっと大変だったりします。(大変でした。笑)
どうしてもうまく書けないときには
社会保険労務士事務所で申請を手伝ってくれるので
そういうところを探して頼むのも良いですよ。
有料ですけどね。
「障害年金 相談」で検索するとヒットすると思います。
投稿: 朝倉玲 | 2021年6月 9日 (水) 10時56分