
ポケモンマンホールの蓋だから、略して「ポケふた」。
地域振興のために全国の自治体と連携して設置されている、特別製のマンホール蓋のことです。
特定の自治体に1つしか設置されていないので、「ポケふた」を探して写真に収めることが全国的に人気です。
福島県の北隣の宮城県では15自治体に設置されています。
我が家では南部を中心に10カ所を巡りました。
設置されている場所は公式サイトに出ているのですが、宮城県は大半が沿岸部です。
沿岸部。
つまり2011年3月11日の東日本大震災で津波の被害が甚大だった地域です。
「ポケふた」を探しながら、被災地を訪れてほしい。
時間が過ぎても、ポケふたを探しに来ることで、被災地の現状を見て知ってほしい。
「ポケふた」は復興を頑張っている地区に設置してあるので、そこで買物などもして復興支援をしてほしい。
そんな願いから設置されているようです。
我が家では、この春に宮城県北部の三陸エリアにポケふた探しに行く予定だったのですが、ご承知のように新型コロナの影響で外出は自粛。
6月19日から県をまたいでの往来が緩和されたので、21日の日曜日にやっと行ってきました。
最初に訪れたのは石巻市。
こんな感じで設置されています。

正面から見た絵柄は冒頭の写真。
猫のポケモンがたくさんいるのは、猫島と言われる田代島が石巻市にあるからのようです。
こんなふうに、ポケモンとその地域の名所や特産品が絵柄に組み合わせてあります。

石巻市は漫画家石ノ森章太郎氏の出身地としても有名。
石巻駅には仮面ライダーやサイボーグ009、ゴレンジャーやロボコンなどのイラストのラッピング電車が停まっていました。(写真をクリックして拡大して見てくださいね)

旧北上川の中州には、宇宙船のような丸い不思議な形をした「石ノ森漫画館」もあります。
津波は川を遡ってこの記念館にも押し寄せたのですが、津波を想定して作ってあったおかげで押し流されることもなく、逃げ込んだ多くの人たちの避難所になったそうです。
その後、石ノ森章太郎のファンの人たちもボランティアとして加わって、館内に流れ込んだ泥などを撤去して、再開にこぎつけたということです。
次に訪れたのは女川町。
「シーパルピア女川」という場所にポケふたがありました。

シーパルピア女川はびっくりするくらい綺麗な場所でした。
まだ朝早かったので人影はまばらでしたが、日中は人出も多いのではないかと思います。

ここのポケふたはこれ。
キャモメという名前のカモメのポケモンが描かれています。
女川には本物のカモメもたくさん飛んでいました。
後ろにいる青いネッシーのようなポケモンは、宮城県の応援ポケモンの「ラプラス」で、宮城県のポケふたには必ずラプラスも描かれています。

シーパルピア女川では、こんなもののも見つけました。
鮮やかで可愛いタイル絵です。
スペインタイルというものだそうで、これは女子トイレの壁にありました。
高さ20mもある巨大津波に直撃された女川は、なにもかもを流されてしまいました。
「色を失ってしまった女川の街をカラフルなタイルで彩りたい」という活動を始めた工房の作品だそうです。
シーパルピアや女川のあちこちに飾られているようで、「おかせい」という店の前のテラスの基礎には、「街をスペインタイルで彩るプロジェクト」に参加した人たちの作品が貼り付けられていました。(ポールの後ろの色とりどりの部分)

次に訪れたのは、とても悲しい場所です。
大勢の小学生と先生方が北上川を遡上してきた津波に呑まれてしまった、石巻市の大川小学校の跡地。
ここにはポケふたはありません。

震災遺構として保存が決まり、周囲の整備工事中でしたが、この日は日曜日なので工事はお休みでした。
校門には美しい花が飾られ、横には祈祷所が設けられていたので、線香を上げて手を合わせました。
あの日、大地震の後で校庭に避難していた児童78名のうちの74名と、11名いた教師のうちの10名が亡くなりました。
未曾有の大惨事です。
しかも、学校には裏山があって、そこに登れば津波から逃れることができたかもしれない、と聞いていました。
学校の奥、子どもたちが避難したという校庭から、さらに向こうへ目を向けると──

近い!!!
校舎の右横の低いグリーンは立ち入り禁止のネット。
その向こうの横に細長く見える茶色い部分が校庭で、その奥の明るいグリーンの斜面が裏山です。
写真では距離があるように写ってしまいますが、実際には目と鼻の先です。
校庭の真ん中からせいぜい100m? 200mは離れていないような気がします。
この山なら低学年の子でも登れたでしょう。
子どもたちが避難してから津波が来るまで50分ほどあったといいます。
すぐに山に登れば、たぶん全員助かったはず。
でも、大人たちはすったもんだの末、裏山ではなく、北上川の橋のたもとの三角地帯(以前から避難場所に指定されていたところ)へ子どもたちと避難を始め、結局、川を遡ってきた津波に呑まれてしまったのです。
何故!? と思いました。
こんなに簡単に助かる場所が目の前にあったのに、何故そっちへ行ったの!??
裏山の近さがあまりにも衝撃的で、思わず涙が出ました。
「先生たちが津波を甘く見ていたからだ」という意見もずいぶん聞きました。
津波が川を遡ってくることを知らなかったのだろう、と。
それはその通りかもしれないのですが。
でも、その後、改めて大川小学校の出来事をネットで調べてみると、それほど単純なことでもなかったことがわかりました。
そもそも、津波が海岸から4キロも離れた場所まで遡ってくるとは、当時石巻市では誰も想像していなかった。
想像していなかったから、対策も考えていなかった。
しかも、川の様子は学校からは山と堤防に遮られて見えない。(確かに、学校の場所は堤防から一段低くなっていたし、山も川の右手前にせり出していて、川はまったく見えませんでした)
その状況で、先生たちは、どういう避難が一番安全か決めかねていたようです。
先生以外の地域の住人も来ていて、避難の方法で口論になっていたという証言もあります。
川へ向かって避難を始めたのは、地震発生から40分後。
その時、川の橋の下には津波が押し流してきた防風林の松が大量に引っかかり、ダムのように水をせき止めていたそうです。
堤防の上を越えて10メートルもの波が来るのを見たとき、子どもたちは、大人たちは、どんな気持ちだったか──。
「裏山があるんだから、きっとそこへ逃げていたはず」と思っていた親たちが、状況を知って「何故!?」と学校や自治体の対応を追求したこと。
さらには市や県を相手に裁判を起こして、勝訴したこと。
これまで新聞やテレビで見聞きしてきた情報の数々が、現場に立つことで、やっと繋がってひとつの事件として見えた気がしました。
私も子どもを持つ親です。
親の気持ちは本当によくわかる。
同時に、学生時代に教師の勉強をしてきたし、同級生や後輩には教師が大勢います。
教師の側の混乱や葛藤もわかる気がしました。
裁判で学校や自治体側の責任を認める判決は出ましたが、もっと大事なことは、「ありえないと思うような出来事にも、万が一を考えて備えておくことは必要」ということなのだと思います。
我が福島県の原発事故だって同様です。
誰も原発が事故を起こすことを想像していなかったから、事故に対する備えもなかった。
安全神話を信じすぎていたのです。
そう、私自身も。
今回の新型コロナも同様ではないでしょうか?
これだけ世界中で人の往来が激しくなっているのだから、パンデミックの可能性は高まっていたはず。
でも、誰も本気でその危険性を考えていなかった。
だから、今のこの状況がある──。
備えることは大切ですね。
少しでも実際の備えがあったことで、結果が大きく変わることはあります。
想像していたおかげでパニックに陥らずにすむ可能性もあります。
備えることが命を助けるかもしれないのなら、大袈裟と人から笑われても、「ひょっとしたら」と考えておくことは大切なのだと思いました。
宮城県のポケふた探しは、同時に被災地巡礼の旅でした。
この後、昨年10月の台風19号の水害で大きな被害を受けた道の駅津山を訪れて買物し(少しですが復興応援)、南三陸町、気仙沼とポケふたを探して回りました。
これは南三陸町のポケふた。

気仙沼市のポケふたは、あっとびっくり、歩道の改装工事のために養生中でした。

気仙沼の観光情報サイトを見たら、7月末まで工事のため公開休止だそうです。
下調べが甘かった。(^^;
でも、工事が完了したら、きっと綺麗なポケふたがまた見られますね。
その時にまた来てみたいです。
↓本来の気仙沼のポケふた(公式サイトから)

さらに脚を伸ばして、奇跡の一本松がある岩手県陸前高田市の津波復興祈念公園にも行きました。

ここは津波伝承館と道の駅がエントランスを挟んでひとつの建物になっていて、とても美しかったです。
上の写真のエントランスをぬけ、まっすぐ堤防に向かって登っていくと、その向こうが海になっています。

海が本当に綺麗。
こうしてみていると、本当に穏やかな海なのですが……。
中央の石の台はベンチではなく献花台のようです。

奇跡の一本松は塩害で枯れてしまってモニュメントになりましたが、意外なくらい高くて遠くからもよく見えました。
今でも多くの人たちの心を支えているのでしょうね。
伝承館にも行きたかったのですが、明るいうちに帰宅しなくてはいけなかったので、残念ながら見る時間がありませんでした。
次は、この陸前高田を目的地にして、改めてしっかり見たいと思いました。
自分の目で見て、感じて、考えることは、やっぱり大切です。
以上、宮城県北部のポケふた探しと宮城県+岩手県の被災地巡礼のレポートでした。
長文にお付き合いくださってありがとうございました。
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