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2009年8月28日 (金)

海の王の休息・4「海の民の話」

 さて、裏話の4回目は、「フルート」に登場する海の民の話について。
 でも、その前にお断りから。


 この先には物語の内容に関する重要な記述があるので、まだ本編を読んでいない方はご注意ください。


 ――では。


 今から3千年あまり前、世界には魔法の力を持つ人間たちが住んでいました。今のエルフ族の先祖にあたる人々で、自分の生活に必要なことを魔法でこなすことができました。
 その魔法をコントロールする呪文を見つけ、光の魔法と名付けたのがユリスナイ。彼女が作った光の魔法の呪文書は世界中に広まり、非常に多くの人々が強力な魔法を使いこなせるようになりました。
 ところが、強力な力を手にすると、相手を打ち倒して自分が優位に立とうと考え始めるのが、人の常。そこを闇の権化であるデビルドラゴンにつけこまれて、世界中で魔法戦争が始まってしまいます。強力な魔法のぶつかり合いに、世界中の大陸が引き裂かれ、大部分の生物が、動物も植物も人も含めて、絶滅します。
 この事態を避けるために、ユリスナイと仲間たちは大地の一部を魔力で空に浮上させ、天空の国を作りました。その後、彼らは風の犬で天空の国から下りていって、光の魔法で地上の復興に努めます。


 とまあ、このあたりのことが、外伝「ユリスナイ」に書いてあるわけですが。


 このとき、ユリスナイの仲間だったルクァという青年が、海で生き延びていた人々を見つけて、彼らと一緒に暮らすために海へ下りていきました。このルクァが初代海王。彼は人間の間では海の神としても信仰されています。
 海で生き延びていた人々は、今の海の民の祖先。自分たちの体を魔法で海に適応させて、魔法戦争の影響が少なかった海で生活していました。ところが、魔法で体を作り変えたために、海の民は老化スピードが速く、他の種族より早く大人になり、早く年老いていきます。このため、海の民は13歳で婚約、14歳で結婚できる決まりになっています。海の民の平均寿命は30歳くらい。普通の人間の半分以下です。


 という海の民の特徴を、今回の「13」でようやく書くことができました。「3・謎の海の戦い」を書いた時点でできあがっていた設定です。
 この特徴から、海の民の血を引くメールは年齢より大人びて見えます。メールのいとこの三つ子たちが、やはり大人っぽく見えるのも同様です。「13」には25歳で白髪白いひげの老戦士バハリ(名前は出てこないけれど)も登場してきます。
 「3」でフルートとゼンが、メールの結婚相手として渦王から決闘させられたり、「7」で14歳になったメールがいとこのアルバと婚約していたり――というのも、すべてこの海の民独特の特徴が背景にあります。

 ただし、海王や渦王、その親族にあたる海の王族たちは、強力な魔力を持っているために、もっと寿命が長く、普通の人間と同じ程度には生きることができます。メールは海の魔力を持ちませんが(この理由についても、今回の「13」でようやく書けました)、彼女は半分森の民で、森の民は長命なので、短命の海の民と足し引きしてチャラ、ということになっています。
 ちなみに、メールの父の渦王は現在44歳、母のフローラは亡くなった時点で150歳以上。彼らが結婚するときに周囲が反対した、というのも納得ですね。同じ渦王の島に住みながら、海の民と森の民が結婚することがないのも、ましてその間に生まれた子どもがメール以外にいなかったことも、当然と言えば当然のわけです。
 渦王とフローラが結婚するに至ったいきさつは、そのうちどこかで機会を見つけて書くことにします。


 とまあ、ゼンが大活躍する物語の裏側には、こんな設定が山ほどあった、今回の「13」でした。
 渦王(海の王)の役目は何か、とか、海の戦士たちはどんな編成になっているのか、とか、「3・謎の海」で描ききれなかった部分も書くことができました。
 海流や深海といった海の中の様子も、たっぷり描けました。
 「3」でフルートの道案内役を務めたウミツバメも、実はこっそり再登場していました。
 いろいろ書くことができて、作者は満足です。(笑)

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