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2008年9月 4日 (木)

「乗車権」

  BUMP OF CHICKEN のアルバム2枚をとっかえひっかえしながら、ほとんど一日中聴いています。はい、今回の執筆BGMは完全にBUMPになりました。(笑)


 このグループの歌は非常に面白いです。いや、わはは、と笑うように面白いというのではなく、聴いているうちにどんどん歌の内容が入ってきて、最初に聴いたときと印象が変わっていったり、最初にはなんとも思わなかった曲がすごく良く感じられてきたり――奥が深い、というのでしょうかね。聴き込むほどに良さが増してくるところが興味深いです。
 そうですね。私が若い頃から好きだった中島みゆきの歌にも似たところがあるかしら。曲調は全然違うけれど、聴けば聴くほど良くなっていくところが共通しています。

 アルバム「ユグドラシル」の中の「乗車権」は、真っ先に気に入った曲でした。たぶん、曲調が強くて歌詞が聴き取りやすかったから、すぐに内容が入ってきたのでしょうね。いくら歌詞カードを見ていても、やっぱりメロディやリズム、歌い方と組み合わさった時に、初めてその曲がわかってきますから。
 歌詞を紹介しなければ、知らない人には全然わからないわけですが、とにかく良い歌です。若者たちの焦り、名誉欲、駆り立てられるように突っ走っていく気持ち――そんなものがシャウトをまじえた歌声と強いビートのメロディで歌い上げられていきます。
 先にも書いたけれど、決して綺麗事ではない。友だちを押しのけてでも、人をだましてでも、夢に向かって闇雲に進む人間の姿。でも、そのうちに自分自身が乗車権(乗車券と掛けてある)だけでなく、「人間証明書」まで失っていることに気がつく。後悔しても、大勢を乗せて走るバスは決して停まってはくれない……。
 う~ん、深いなぁ~!


 この歌は、いろいろな場面や物語で理解できるんですが、私などは受験戦争の最中にある子どもたちを思い浮かべます。それまで「友だちや他の人と仲よくしなさい」と教えられてきたはずなのに、志望校という夢のためにはその友だちでさえ敵になっていく。立ち止まることも考えることも許されずに、ひたすら前へ進むだけ。そうやって夢をかなえたとき、そこには何が残っているのか。いつの間にか、大事な何かを忘れてしまってはいないか。

 長男が、図らずも進学校に行ってしまって、その戦いをくぐり抜けてきましたからね。とにかく、信じられないくらいハードな高校生活を送る様子を、親としてはらはらしながら見守るしかありませんでした。――最後の最後になって、親子そろってそのバスから飛び下りてしまいましたが。(笑)
 そこから得るものも確かにあったけれど、完全にそこに乗っかっていたら、きっと失うものの方が多かったでしょうね……。
 そんな理由もあって、この曲はアルバムの中の一番曲です。
 長男は、全然有名ではないけれど、自分が一番やりたかったことができる学校に無事入りました。大学生活は楽しくてしかたないらしいです。そんな彼も、この曲は印象深く聴いているでしょう。


 人間にはいろいろな生き方があるけれど、自分を失うような生き方はやっぱり哀しいよな、とBUMPを聴いていて思います。

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