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2008年4月10日 (木)

仮面の裏側・2「言うことを聞かないキャラたち」

 「フルート9」の裏話、2つめのネタは例によって、作者の思惑通りに動いてくれないキャラクターたちの話です。
 ええもう、毎回、連載が終わるたびにこういう話はしておりますが。(笑)
 では、まずこの一言から。


これ以降に、物語の重要な部分に関する記述があります。ご注意ください。


 これ書いておかないと、もろに「9」のネタばらしになっちゃいますからねぇ~。(笑)
 では、問題です。
 今回の作品で、当初の作者の思惑を越えて一番「暴走」したキャラクターは誰だったでしょうか?
 答え。
 オリバンとユギルです。

 どこがどんなふうに暴走していたか?
 だって、そもそもの作者の予定では、あの二人は今回の作品に「まったく登場しなかったはず」だったんですもの!


 驚いたでしょ?(笑)
 人気投票でもけっこうなポイントを稼いでいる二人です。あれだけ重要な役割を果たしたり、大事なことを言ったりしているんですが。
 ええもう、本当に。「出てくるはずじゃなかった二人」なんです。

 オリバンは、年明け早々に、隣国のアイル皇太子がザカラス新王になる戴冠式に出席することになっていました。これは、ロムドとザカラスの真の和平条約に調印するための、非常に重要な外交でもありました。
 だから、オリバンは絶対にこれをすっぽかすわけにはいかなかった。ユギルの占いで、仮面の盗賊団のことや、フルートたちがそちらへ向かっていることは聞かされていても、駆けつけるわけにはいかなくてじりじりする……という場面を書くはずだったんです。

 ところが。

 フルートたちがディーラのロムド城に立ち寄らない、とわかった瞬間、オリバンがどなりました。
「こんな近くまで来ながら素通りとは何ごとだ、馬鹿者!」
 さらに、彼らの行く手で魔王が待ちかまえているとわかったとたん、作者の私が止める間もなく、ロムド城を飛び出してしまいました。ユギルと数名の従者だけをお供にして、吹雪の中へ。
 でも、やっぱり彼らと共に行くわけには行かない、公人のオリバン。フルートたちを心配しながら、せめてこれだけでも持って行け、と聖なる剣をゼンに預けて、後ろ髪を引かれながらロムド城へ戻る……というシーンを書こうとしました。
 すると、いきなり筆が進まなくなってしまったんですね。書いても書いても、思うように先へ進まない。指が打つキーボードが急に重くなってしまったみたいでした。

 それでも、ほぼ一日、うんうんうなって、なんとかそっち路線へ話を進めようとしました。
 オリバンは、絶対にフルートたちと一緒に行く、と言い張ってます。あの~、戴冠式が……和平交渉が……と、従者になって引き止めてみましたが、聞き入れてもらえず。「ユギル殿、殿下を説得してください~」と泣きついたら、銀髪の占者までが「わたくしもまいります」と言い出してしまう始末。
 あ~う~う~…………。どうしてこいつらって、こう自己主張が強いんだっ!?
 キーボードから手を離して、しばし腕組み。そして、やがて、溜息。だめだこりゃ、絶対に止められないわ。
 というわけで、それまで書いていた部分をボツにして書き直しました。16章「納屋」の後半の場面を、すっぱりと。
 もう知らない! 予定と全然変わっちゃうじゃない。いったいどう展開させていくってぇの、この物語を!? 責任とって、ちゃんと決着つけなさいよね!
 頭の中で、オリバンやユギルとそんなふうに口喧嘩しながら。


 そういうわけで、「9」は当初の予定とはだいぶ違った展開の物語になってしまいました。
 本当に大丈夫なのか、予定していたラストにちゃんとたどり着けるのか、ハラハラドキドキしながらの執筆でした。オリバンもユギルも、これでもかってくらい目立ってしまうし。はぁ。
 でもね、今となってみれば、これでよかったんだと思います。この二人が登場してこない「9」なんて、想像がつきませんからね。


 え、オリバンが出席しなかったアイル王の戴冠式はどうなったかって?
 それについては、また別の物語で……。(笑)

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コメント

うはーっ!
ユギルは登場する予定ではなかったのですか!
オリバンも!
びっくりです。\(゜□゜)/
フルート9で特に印象深かったのは、ユギルがジャックに話す場面だったもので。(私の場合)

投稿: アヒルのしっぽ | 2008年4月10日 (木) 22時37分

登場するからには、きっちりお仕事してもらう、というのが朝倉のポリシーです。
ええ、出たからには活躍してもらわなくては。(笑)


実を言えば、ジャックもあれほど目立つ予定じゃなかったのですよ。
特に後半のあの裏切り。
あれも実は当初の予定にはありませんでした。
(いったいどういう物語にするつもりだったんでしょう? 笑)

もっとすんなりと、フルートが金の勇者であることを納得してくれるはずだったのに、
止める作者を振り切って、
「俺は我慢できねえ!」って、
やっぱりロムド軍を飛び出していっちゃいました。


う~わ~……とは思ったんだけれど。


ユギルとオリバンが物語に加わってきた次点で
私はもう、ストーリーをキャラクターたちに委ねてしまってましたからね。
「舞台と設定は準備したから、あとは自分たちで好きなように動きなさい!」
と、彼らが行動するのに任せてました。

そしたら、あんなシーンが見られましたとさ。(爆)

投稿: 朝倉玲 | 2008年4月11日 (金) 05時15分

>え、オリバンが出席しなかったアイル王の戴冠式はどうなったかって?

ユギルは出席しなくてもどうにかなりそうという未来まで見て、
戦いに加わることに決めたんだろうか?
勇者のピンチが優先か?でも、ロムド国の占者なわけだしねぇ。
すべて考えた上で、作者殿に逆らってみたのかなぁ(笑)

投稿: くらげ | 2008年4月11日 (金) 23時57分

>勇者のピンチが優先か?でも、ロムド国の占者なわけだしねぇ。
>すべて考えた上で、作者殿に逆らってみたのかなぁ(笑)

勇者の危機を救うことが、ひいてはロムドや世界の危機を救うことになる、という判断だったんだろうなぁ。よく解釈すれば。
んとにも~。自主性ありすぎるキャラってのはまったく。(苦笑)

投稿: 朝倉玲 | 2008年4月12日 (土) 08時57分

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