« 「フルート6」裏話・6 | トップページ | 「フルート6」裏話・おまけ »

2007年3月26日 (月)

「フルート6」裏話・7

 というところで、裏話もそろそろ終わりです。あんまり書くと、今度はこの先のネタばらしを始めそうなので。(爆)

 今回の「6」で大きく取り上げたものに、「歴史」というのがありました。
 デビルドラゴンと、それに対抗する光の人々との、二千年以上昔から繰り広げられている光と闇の戦いの歴史。
 ロムド王国という国が持つ四百年の歴史と、その中で非常に斬新な施政を行っているロムド14世の統治の歴史。
 
 でもっ!
 実は朝倉、学生時代は歴史というものが、大の大の大の苦手でしたっっ!!(爆)

 いえ、歴史に限りません。地理も公民も、なんでもかんでも、社会と名のつくものはおよそすべて苦手でした。唯一興味があって良くできたのは倫理社会のみ。……これって、社会科というよりは哲学や心理学に近いジャンルです。(笑)

 歴史ってねー、授業で聞いていても、さっぱり理解できませんでした。
 場面が浮かんでこない、と言うんでしょうか。
 「○○年に××という出来事があって、△△という人や◎◎という人がこういうことをして、その結果□□ということになった。」
 う~んんん……ことばとしては理解できるけど、具体的にどういうことなのか、わっかりっませぇーーーん!!(苦笑)
 
 そんな私が、初めて「あれっ、歴史ってもしかしたら面白いのかな?」と感じたのは、みなもとたろうの漫画「風雲児たち」を友人から借りて読んだときでした。もともと、この作家は好きだったんですが。(笑)
 幕末の時代を生きてきた風雲児たち。もともとギャグ漫画家だから、笑えるような内容でありながら、その頃の風雲児たちの生き方、世の中のあり方、個人の想い、集団の想い……それがやがて、大きなうねりのような時代の流れになって、幕府を倒し、明治政府を生み出す力になっていく。それを作っているのは人。歴史を作っているのは、人の想い、人の信念、人の生き様。
 ああ、そうなんだ、とすごく思いました。これが歴史なんだぁ、と。

 私の旦那は歴史が好きです。旦那の書棚には歴史物の本がずらっと並んでいます。普段あまり口数は多くない人なのですが、この手の話題を投げると、すぐに乗ってきて、あれこれ話してくれます。
 その旦那がいいました。「歴史ってのはそういうもんだ。人間の方から見るものなんだ。でも、学校の授業だとその逆なんだよな。○○年に××という出来事があった、という『結論』の方から教えてくる。それじゃ、実際にその中で何が起こったか、なんてわからないんだよ」
 なるほどな~……! とまた納得しました。
 いえ、歴史好きな方たちにしてみれば、そんな考え方、歴史の捉え方は当然だったんでしょうが、何しろ「歴史は苦手!」と思いこんでいた私にとっては、目からウロコのような考え方だったわけです。

 歴史は人間が作るもの。人間の側から見ていくもの。
 ひとりひとりの生き様が、やがて複数の人の生き方になっていき、それがまたさらに多くの人たちと関わり合って、時代の動きを作っていく。そうして、時には国家全体、世界全体をも揺り動かすような大きな歴史的出来事を作っていく。
 そう思ったとき、歴史っていうのはすごく身近で壮大なものなんだ、と思いました。

 旦那はこうもいいました。
 「歴史ってのは身近な、身の回りにあるものなんだ。自分たちが住んでいるこの町にだって、歴史ってのはある。なのに、学校ではそういうのを取り上げないで、遠い外国の出来事とかばかり教えるんだよな。これも逆だよな」と。
 確かに、確かに。はい、確かに。
 私が住んでいる場所は福島県。奥の細道で有名な白河の関がある、奥州街道の入口の場所です。私の実家がある市には、旧国道と呼ばれる道路がありますが、これは昔の街道筋。場所によっては、当時の松並木が残っていたり、宿場町として栄えた町が、今も一つのまとまった町として残っています。
 私がいま住んでいる場所はとても田舎なところですが、さらに山の方に向かって車を走らせていたら、なんだか妙に形の整った半円形の山がいくつも見える。「あれ、もしかしたらこれ……」と思っていたら、案の定、道ばたに看板がありました。「△△古墳群」。観光名所でもなんでもありません。半円形の山はどれも、低いフェンスで囲まれていて、畑や小さな雑木林になっていました。個人の所有地なのです。当たり前の、本当にあったり前の風景の中に、歴史が残っていました。
 そうか、これが歴史なんだ、と思いました。
 歴史は人が生きてきた跡。出来事や偉人を年号とセットで暗記するものじゃなくて、人が何をどうやってきたかの足跡なんだ。
 それじゃ――フルートたちの世界では、どんな出来事があったんだろう?

 異世界もののいいところは、どんな歴史を作るのも思いのままだということ。暗記する必要もありません。
 それこそ、好きなように、あれこれ思いめぐらせました。
 とはいえ、人の生き様は、住んでいる場所そのものの地形や気候とは切っても切り離せないので、そこをしっかり条件に入れながら……。
 そうして生まれてきたのが、ロムドや「5」に出てきた北の大地の歴史であり、二千年あまり前からの光と闇の戦いの歴史でした。
 これはまだまだ描ききっていません。この後、シリーズを重ねて行くにつれて、もっといろいろなことを歴史として語るようになるだろうと思います。学生時代、あれほど歴史が苦手だった私がねぇ……と我ながらおかしく感じることもありますが。

 異世界に繰り広げられているフルートの世界。
 そこにまた、この世界とも違った歴史を刻んでいくのが楽しいと感じている朝倉なのです。
 皆様にも一緒にその歴史を楽しんでもらえたら嬉しいな、と思っています。

|

« 「フルート6」裏話・6 | トップページ | 「フルート6」裏話・おまけ »

コメント

「勿来の関」
「なこそのせき」って読むのね。
知らんかった。
おべんきょさせていただきました。

投稿: むつごろう | 2007年3月26日 (月) 14時16分

> その旦那がいいました。「歴史ってのはそういうもんだ。人間の方から見るものなんだ。でも、学校の授業だとその逆なんだよな。○○年に××という出来事があった、という『結論』の方から教えてくる。それじゃ、実際にその中で何が起こったか、なんてわからないんだよ」
> 旦那はこうもいいました。
> 「歴史ってのは身近な、身の回りにあるものなんだ。自分たちが住んでいるこの町にだって、歴史ってのはある。なのに、学校ではそういうのを取り上げないで、遠い外国の出来事とかばかり教えるんだよな。これも逆だよな」と。

なるほど!私も目からウロコです。
ご教授ありがとうございました。
なんか、いい旦那さんですね~!いいなあ~!

そうか、このフルートの冒険のベースに流れる時空を超えたスケールの大きさと感じるものは、雄大な歴史の流れなのね。

ところで玲さん、フルート裏話、いっぱい書きましたね。
すごい、すごすぎる。とっても面白かった。パチパチ!

投稿: アヒルのしっぽ | 2007年3月26日 (月) 15時15分

すんませんっ! 思いっきり勘違いして書いてしまいましたっっ!!

奥の細道の入口として有名なのは「白河の関」(しらかわのせき)。
勿来の関は、同じく北の玄関口に当たる関所ですが、こちらは海岸沿いにあります。今のいわき市勿来(なこそ)という場所にあります。
あう~。頭の中でごちゃ混ぜになってた。(苦笑)
はい、朝倉は歴史が思いっきり苦手でございます。
勿来の関、何年か前に浜にいったときに尋ねているのに。ったく、気づけよなぁ。自分。
修正しておきます。(汗)

投稿: 朝倉玲 | 2007年3月26日 (月) 15時17分

>なんか、いい旦那さんですね~!いいなあ~!

普段はホント、あまりしゃべらない旦那です。
ただ、歴史と経済とSF関係のネタを投げると、時々興がのってあれこれしゃべってくれます。
ただ、そういう時って、私自身もそれを上回るくらいあれこれしゃべってしまうので、いつの間にか旦那の話を奪っていて、後から反省します。(爆)

>ところで玲さん、フルート裏話、いっぱい書きましたね。
>すごい、すごすぎる。とっても面白かった。パチパチ!

あ、あはは。
要するに、書くものがなくて欲求不満なんです~。
書くことが私のストレス解消だし、精神安定剤だから。(笑)

大量に書いたんだけど、
楽しんでいただけたなら良かったです。
おつきあいありがとうございましたー。

投稿: 朝倉玲 | 2007年3月26日 (月) 15時25分

>要するに、書くものがなくて欲求不満なんです~。

あら、サイドストーリー、待ってましてよ。(笑)
ま、ぼちぼちいってくだされ。

投稿: むつごろう | 2007年3月26日 (月) 20時07分

>修正しておきます。(汗)
 
あれま、そうだったの?
私も歴史をはじめとして社会科苦手なもんで・・・

読めなくて悔しくて検索かけて・・・
読みだけ納得して満足してたわ。(爆)

投稿: むつごろう | 2007年3月26日 (月) 20時16分

>あら、サイドストーリー、待ってましてよ。(笑)

あはは、それはもちろん書くつもりなんですが、
ユギル氏の過去物語は「ジュリア」並の大作になるので
ちょっこらちょっと簡単には書き出せない。

もうひとつ、ちょっとした作品は思いついているので、
こっちを先に書こうと思ってます。
あと1,2日熟成期間が必要かな~?(笑)

投稿: 朝倉玲 | 2007年3月26日 (月) 20時51分

>読めなくて悔しくて検索かけて・・・

勿来は「な来そ」つまり「来るな」という意味なのだそうです。
つまり「来るなの関所」という意味。

この関所を越えた先は陸奥(むつ)の国、言わば未開の地。
来るな、来るな、この関所の先へは来るな――
で、勿来の関。

まあ、辺境部隊が守る関所だった、ってことでしょうなー。(笑)

投稿: 朝倉玲 | 2007年3月26日 (月) 21時00分

>辺境部隊が守る関所

…小さい頃のオリバン君と、ジパシエさんがいる風景を想像してしまいました~。
それも、何故か日本の甲冑姿で。
に、似合う(*^^*)


人気投票であえてフルート君に票を入れない私ですが…
フルート君の人柄や、実は頑固な所とか大好きデス。
でもでも、主人公には票を入れないのだ。
それも主人公の試練なのじゃ、よ。(笑)

投稿: ぺちゃん | 2007年3月27日 (火) 13時26分

>それも、何故か日本の甲冑姿で。
>に、似合う(*^^*)

おっ、それは本当に似合う!(爆)

今でこそオリバンの方が大きくなりましたが、
10年前にはオリバンはかわいらしい少年、ジパシエは大男。
で、密かに皇太子のオリバンをそばで守っている。
イメージはすっかり牛若丸と弁慶ですから。(爆)


>フルート君の人柄や、実は頑固な所とか大好きデス。

あはは。
そう聞かせてもらえると、ほんとにホッとします。
でも、フルートのあの頑固さって、意外と読者に受けているのね。
まわりの人たちは苦労させられてるんだけど。(笑)

>でもでも、主人公には票を入れないのだ。
>それも主人公の試練なのじゃ、よ。(笑)

はは~、時の翁。承知いたしました。

って。(笑)

でも、主人公には票を入れない、っていう気持ちも、実はわかるんですよねぇ。なんてったって主人公なわけだから。(意味不明?)

投稿: 朝倉玲 | 2007年3月27日 (火) 16時21分

>なんてったって主人公なわけだから。(意味不明?)

まさに、ズバリです!…でも意味不明(笑)


投稿: ぺちゃん | 2007年3月27日 (火) 17時00分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「フルート6」裏話・7:

« 「フルート6」裏話・6 | トップページ | 「フルート6」裏話・おまけ »