SPEEDIの予測データ封印に考える
昨夜、フジテレビ系列番組の「Mr.サンデー」で「封印された予測データ」という特集を見た。
原発事故の際には、放射性物質の拡散を風向きや風の強さ、地形からいち早く予測して、避難の支援をするはずだった予測プログラムSPEEDI(スピーディ)が、原発の北西方向に拡散を予測していたにもかかわらず、その予測データが事故後10日近く公開されなかったのは何故か、ということの検証。
SPEEDIのシミュレーションデータを何度も取りながら公開していなかった原発保安委員会、文科省、防衛省のそれぞれ代表に直接理由を聞いてみた、という内容だったが、要するに、事故発生時の情報連絡、指揮系統がしっかり作られていなかったから、ということのようだった。
事故で拡散した放射性物質の量がわからない以上、予測は不確実でパニックが起きる可能性があったので、公開を見合わせた――という説明も、すでにされている。
それを見ていた旦那が言った。
「要するに、原発事故が起きたときの対応のしかたが、まったく考えられていなかったってことだろう」
確かに。
事故で放射線量を測定する機器が故障する、という事態は、あらかじめ充分予測できること。
そうなったときに、事故をどう判断するか。事故が起きた際にSPEEDIが出した予測データを、どう処理し、どういう対応に結びつけるか。そういう危機対応マニュアルが、まったく作られていなかった、ということなのだよね。
では、何故そんな状況になっていたのか?
「原発は絶対安全。事故を起こすはずはない」という原発安全神話が、それを妨げたのだろう。
事故を起こすわけがない原発に、事故発生時の対応マニュアルがあっては、絶対安全とは言えない。実際、原発に関しては何重にも安全策が講じられている。だから、事故のことは考えなくても大丈夫なんだ――と。
「慢心」
その一言だよね。本当に。
日本政府は、慢心の下に、原子力政策を推し進めてきた。
日本国民は、その危険性を聞かされながらも、「今の日本社会に電力は絶対必要だから」と、見て見ぬふりをしてきた。
そのツケがまわってきたのが、今回のこの福島での原発事故。
これから、放射性物質による被害と、その風評による被害は、ますます深刻になっていく。その影響は、福島県内だけには留まらない。日本中を巻き込む事態になっていく。
日本人は本当に痛い授業料を支払うことになったと思う――。
だけど、SPEEDIの予測データが、3月14日や15日の時点で公表されていたら、私たちはどうしたか?
福島県伊達市にも、放射性物質の飛来は予想されていた。ただ、放射性物質の量は不明。だから、きっと「原発北西方向に放射性物質が流れていくと思われます。ただし、その影響については予測できません」と発表されたんだろう。その時に、私たちはどう行動しただろう?
もちろん、避難できる人はしたはず。だけど、我が家では?
義父は絶対にこの家を離れたがらなかったから、義母もきっと避難はしなかっただろう。震災の後片付けにも、非常に忙しい時期だった。旦那はここを離れたら仕事ができないし、地域の人たちに物資を販売する役目も担っていた。息子も精神的に衰弱状態で、あの時点でここを離れたら、いっそう悪化する危険があった。
放射線量はあの時点でも測定が始まっていて、人体に即影響が出るレベルではないことはわかっていた。
実際にそうなってみなければわからないことではあるけれど、我が家は、例え予測データが出ていたとしても、やっぱり避難はしなかったんじゃないかな……。そんな気はする。
起きてしまったことを嘆いても、現実にはどうしようもない。
もう二度と、こんなことが起きないように、しっかり検証して、可能な限り安全な対策を講じること。
そのための「フクシマ」でなくてはならないのだと思う。
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