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2008年6月13日 (金)

ナルニア国物語2「カスピアン王子の角笛」

 観てきました! 「ナルニア国2・カスピアン王子の角笛」!
 あくまでも本来のイメージで観たかったので、字幕スーパー版を、しかも平日の日中に観に行ったので、大人の観客が数人いただけで、特等席でゆったりと観てくることができました。


 さて、この「ナルニア2」、最初に映画のポスターを見たとき、私は仰天しました。
 カ、カスピアン王子が青年になってる!!

 私は原作の「ナルニア」が大好きです。ハードカバー版を全巻持っていて、さらにペーパーバックの英語版も持っている、というマニアぶり。ただし、あまり大切にしているものだから、めったに読み返さないという天の邪鬼。今回も、物語としては半分くらい忘れかけていました。わざと読み返しもしませんでした。前回の「ナルニア1」もそうだったのですが、原作を元にしながら、独自の作品として映画に再構成しているとわかっていたので、いちいち「原作と違う!」と驚くことで、映画を楽しむ気持ちを半減させたくなかったから。
 ですが、この青年のカスピアン王子には本当に驚かされました。原作では、こちらの世界からナルニアへ行ったペベンシー兄妹の長男、ピーターと同じくらいの年齢の「少年」となっているんです。はてはて、これはどんなカスピアン王子だろう。ナルニアの世界を救うために、大昔の王である四姉弟を角笛で呼ぶのだけれど、それが自分より年下の子どもたちだと知ったら、王子は失望するんじゃないの? 原作にはないテーマの予感を感じさせてくれました。
 ついでに、カスピアン王子のなんと麗しく凛々しいこと! この際だから、青年カスピアン王子がどんな人物か、そちらの方も楽しんでこよう、と心を決めていました。(笑)


 物語としては、これから映画やDVDで観る方がきっと大勢いると思うので、詳しいことは書きません。ただ、やはり予想通り、王子は四人の王や王女たちにがっかりしてくれたし、ピーターとカスピアン王子の対立という新しいドラマもありました。非常に面白かったです。
 前作で光っていた末っ子ルーシーの演技は、この「2」でひときわ冴えていました。無垢で素直な少女故、一番ナルニアに近くて、アスランに愛されている存在です。
 セントール(ケンタウロス)、もの言う気高いネズミのリーピチープ、アナグマのトリュフハンター(松露とり)……CGの技術の進歩はめざましく、「1」よりもはるかにリアルに自然に、不思議なナルニアの住人たちも画面に再現されていました。特にリーピチープは良かったです。非常に動きが綺麗でした。もっと出番があれば、もっと良かったのに。
 とまあ、映画作品そのものとしては、非常に楽しんで観てきました。

 が。(笑)

 同時に、私は映画に戸惑いも感じていました。
 再現されるナルニアの世界はリアルです。登場人物だけでなく、舞台も、セットのはずの城や砦も(ちなみに、城は本当に20メートルくらいの高さのセットを組んだとか。城の中庭も実物大!)とにかく本物そっくりの迫力。
 そこで繰り広げられる王位継承権争いのドロドロした人間模様、主君を陥れて、それを利用しようとする部下たちの心理劇、そういう部分も本当にリアル。
 リアルすぎて――これ、子どもたちが観て、理解できるのかしら? と思いました。

 「ナルニア」は本来児童文学です。「指輪物語」が大人のためのファンタジーだったのに比べて、「ナルニア」はあくまでも子どもたちを読者の中心に据えて描かれた作品。人間劇のドロドロは確かに原作にも書かれているけれど、同時に、児童文学らしいファンタジックさも満載で、その雰囲気が大人の世界の厳しさを和らげています。
 でも、この映画では、そういうファンタジックさはかなり減らされていました。確かにもの言う動物たちや、ミノタウロスたちファンタジーならではの登場人物は大勢出てくるけれど、それは、ナルニアという世界の現実の一部で、人間たちと同じ立場にあるものと感じられました。初め目に見えなかったアスランが、次第に子どもたちの目に見えるようになっていく――という原作の一番の見せ場もすっぱりカット。ふむ~。
 つまり、原作の持つリアリティとファンタジーの二つの柱のうち、リアリティの方を重視して作ったのだな、とはっきり感じられたのです。

 大人の私は、観ていて面白かったです。
 そうか、こうして人間とナルニアの住人たちは戦うのか。
 戦い方そのものも、投石機が出てきたり、石弓(ボウガン)が出てきたり、リアルです。(投石機が本当はあんなに簡単に連射できないんだぞ、とか、石弓は本当はあんなふうには矢をつがえて撃てないよ~、とか、そういう突っ込みはしないでおくことにしますが。笑)
 とにかく、ファンタジー設定の歴史物を見ているような、そんな感覚でした。
 う~む、面白い。面白いんだけど……やっぱり、子どもにはこれは難しいよね?

 そんなことを考えながら映画を見終わり、帰ってからパンフレットを眺めていたら、映画監督のコメントにこんな意味のことが書かれていました。
 ――原作のように13歳くらいの少年のカスピアン王子に(ナルニアの)すべてをたくすのはリアルじゃない、と考えて、王子を青年にしたんだ。
 やっぱり「ナルニア」はリアル路線に進んだんだ、と再確認したのでした。


 「ナルニア」はこの後、第3章の「朝びらき丸、東へ」の映画化も決まっているそうです。カスピアン王子もまた同じ俳優さんで登場するとか。とてもとても楽しみなのですが、さて、その後のことを考えると、「ナルニア」はどこまで続くんだろうか? と考えてしまいます。なにしろ、製作会社はディズニーですから。7話ある作品全部が映画化されるかどうか、それは、今回や次の「3」の興行成績で決まっていくのかな、などとも考えています。
 映画「ナルニア」も「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに、大人のためのファンタジー映画、という路線で進んでいくのかもしれませんね。

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コメント

カスピアン王子のと、朝びらき丸の二冊、見当たりません。
セットで買ったはずなのに。

カニグズバーグのシリーズもとぎれとぎれ。
子供たちに読んでほしいのと、自分が欲しくて揃えた本たち。

映画化されるときに、どの視点で見るのか。
だけど、今のアニメなどを見ていると、(私が見てるのはわずかですが)リアリティに走ってるものは多いのかなぁと思います。

ファンタジーを前面に、その裏にある大人の駆け引きは描かれても後ろのほうにとは思うのですが。
時代なのでしょうか。
リアルに走っているような気がします。

ハリポタも死があまりにも前面に出すぎてますし。

七月に予約した最終巻で、どんな展開になるのか気になるところです。

投稿: ハム次郎 | 2008年6月15日 (日) 22:25

>今のアニメなどを見ていると、(私が見てるのはわずかですが)リアリティに走ってるものは多いのかなぁと思います。

私も同感です。
それはやっぱり、大人と呼ばれる、高い年齢層の視聴者が増えたからだろうと思います。
ファンタジー映画も同様だろうと。

映画の場合は、CGなどの撮影技術の向上も一因だろうと思います。
ファンタジーの世界が、本当にリアルに再現できるようになったおかげで、
ストーリーの方もリアルになっていく……という感じ。
だから、全体の傾向として
最近のこの手の作品がリアル化していくのは流れかな、という気がします。


>ファンタジーを前面に、その裏にある大人の駆け引きは描かれても後ろのほうにとは思うのですが。

そこなんですよね~。
今回の「カスピアン王子」で一番気になったのはその部分。

大人が見ていれば確かに面白いのだけれど、
やっぱりあれは子どもには難しすぎるやりとり。
「ロード・オブ・ザ・リング」ならあれもまったくおかしくないけれど
「ナルニア」であれを前面に出されると
これは誰のための映画なのかな、と考えてしまうんです。

子どもから大人までが楽しめるファンタジー作品、
というのがそもそものコンセプトだったと思うのだけれど、
「子ども」の観客がちょっと忘れられてしまったかな、と……。

その路線で行くなら行くでいいけれど、
「子どもから大人まで楽しめる」作品は数が少ないだけに
ちょっと残念かなぁ、とも思います。


そういう部分を考えなければ
とても楽しめる作品だったし
戦闘シーンもセットも見応えがあるし
カスピアン王子は本当に麗しいし(笑)
とても良い映画なんですけどね。

投稿: 朝倉玲 | 2008年6月16日 (月) 05:22

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