観てきました! 「ナルニア国2・カスピアン王子の角笛」!
あくまでも本来のイメージで観たかったので、字幕スーパー版を、しかも平日の日中に観に行ったので、大人の観客が数人いただけで、特等席でゆったりと観てくることができました。
さて、この「ナルニア2」、最初に映画のポスターを見たとき、私は仰天しました。
カ、カスピアン王子が青年になってる!!
私は原作の「ナルニア」が大好きです。ハードカバー版を全巻持っていて、さらにペーパーバックの英語版も持っている、というマニアぶり。ただし、あまり大切にしているものだから、めったに読み返さないという天の邪鬼。今回も、物語としては半分くらい忘れかけていました。わざと読み返しもしませんでした。前回の「ナルニア1」もそうだったのですが、原作を元にしながら、独自の作品として映画に再構成しているとわかっていたので、いちいち「原作と違う!」と驚くことで、映画を楽しむ気持ちを半減させたくなかったから。
ですが、この青年のカスピアン王子には本当に驚かされました。原作では、こちらの世界からナルニアへ行ったペベンシー兄妹の長男、ピーターと同じくらいの年齢の「少年」となっているんです。はてはて、これはどんなカスピアン王子だろう。ナルニアの世界を救うために、大昔の王である四姉弟を角笛で呼ぶのだけれど、それが自分より年下の子どもたちだと知ったら、王子は失望するんじゃないの? 原作にはないテーマの予感を感じさせてくれました。
ついでに、カスピアン王子のなんと麗しく凛々しいこと! この際だから、青年カスピアン王子がどんな人物か、そちらの方も楽しんでこよう、と心を決めていました。(笑)
物語としては、これから映画やDVDで観る方がきっと大勢いると思うので、詳しいことは書きません。ただ、やはり予想通り、王子は四人の王や王女たちにがっかりしてくれたし、ピーターとカスピアン王子の対立という新しいドラマもありました。非常に面白かったです。
前作で光っていた末っ子ルーシーの演技は、この「2」でひときわ冴えていました。無垢で素直な少女故、一番ナルニアに近くて、アスランに愛されている存在です。
セントール(ケンタウロス)、もの言う気高いネズミのリーピチープ、アナグマのトリュフハンター(松露とり)……CGの技術の進歩はめざましく、「1」よりもはるかにリアルに自然に、不思議なナルニアの住人たちも画面に再現されていました。特にリーピチープは良かったです。非常に動きが綺麗でした。もっと出番があれば、もっと良かったのに。
とまあ、映画作品そのものとしては、非常に楽しんで観てきました。
が。(笑)
同時に、私は映画に戸惑いも感じていました。
再現されるナルニアの世界はリアルです。登場人物だけでなく、舞台も、セットのはずの城や砦も(ちなみに、城は本当に20メートルくらいの高さのセットを組んだとか。城の中庭も実物大!)とにかく本物そっくりの迫力。
そこで繰り広げられる王位継承権争いのドロドロした人間模様、主君を陥れて、それを利用しようとする部下たちの心理劇、そういう部分も本当にリアル。
リアルすぎて――これ、子どもたちが観て、理解できるのかしら? と思いました。
「ナルニア」は本来児童文学です。「指輪物語」が大人のためのファンタジーだったのに比べて、「ナルニア」はあくまでも子どもたちを読者の中心に据えて描かれた作品。人間劇のドロドロは確かに原作にも書かれているけれど、同時に、児童文学らしいファンタジックさも満載で、その雰囲気が大人の世界の厳しさを和らげています。
でも、この映画では、そういうファンタジックさはかなり減らされていました。確かにもの言う動物たちや、ミノタウロスたちファンタジーならではの登場人物は大勢出てくるけれど、それは、ナルニアという世界の現実の一部で、人間たちと同じ立場にあるものと感じられました。初め目に見えなかったアスランが、次第に子どもたちの目に見えるようになっていく――という原作の一番の見せ場もすっぱりカット。ふむ~。
つまり、原作の持つリアリティとファンタジーの二つの柱のうち、リアリティの方を重視して作ったのだな、とはっきり感じられたのです。
大人の私は、観ていて面白かったです。
そうか、こうして人間とナルニアの住人たちは戦うのか。
戦い方そのものも、投石機が出てきたり、石弓(ボウガン)が出てきたり、リアルです。(投石機が本当はあんなに簡単に連射できないんだぞ、とか、石弓は本当はあんなふうには矢をつがえて撃てないよ~、とか、そういう突っ込みはしないでおくことにしますが。笑)
とにかく、ファンタジー設定の歴史物を見ているような、そんな感覚でした。
う~む、面白い。面白いんだけど……やっぱり、子どもにはこれは難しいよね?
そんなことを考えながら映画を見終わり、帰ってからパンフレットを眺めていたら、映画監督のコメントにこんな意味のことが書かれていました。
――原作のように13歳くらいの少年のカスピアン王子に(ナルニアの)すべてをたくすのはリアルじゃない、と考えて、王子を青年にしたんだ。
やっぱり「ナルニア」はリアル路線に進んだんだ、と再確認したのでした。
「ナルニア」はこの後、第3章の「朝びらき丸、東へ」の映画化も決まっているそうです。カスピアン王子もまた同じ俳優さんで登場するとか。とてもとても楽しみなのですが、さて、その後のことを考えると、「ナルニア」はどこまで続くんだろうか? と考えてしまいます。なにしろ、製作会社はディズニーですから。7話ある作品全部が映画化されるかどうか、それは、今回や次の「3」の興行成績で決まっていくのかな、などとも考えています。
映画「ナルニア」も「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに、大人のためのファンタジー映画、という路線で進んでいくのかもしれませんね。
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