平原綾香「しあわせ」
「しあわせ」は平原綾香さんのニューアルバム「そら」に入っている曲です。作詞 松井五郎、作曲 A. Gagnoon、編曲 島 健。 「ボイジャーズ」や「クリスマスリスト」といった華やかな曲や、心癒す数々の曲の中でも、特に静かで小さな作品です。
でも、私はこのアルバムの中で、たぶん、この曲が一番気に入っています。伝えてくるものが今の私の心情にぴったり来ているから。
歌詞を載せられないのが残念ですが、人と共に生きるということを謳う歌です。共に生きるって素晴らしい! と讃えるのでもなく、一緒に生きようよ! と呼びかけるのでもなく、ただ静かに語りかけるように、自分の内側にある気持ちをとつとつと語るように、静かに歌います。なかなか伝わらない人への想い。迷いながら、惑いながら、人の前で立ちすくむ気持ちを感じさせながら、それでも、「どこかではなく いつかでもない いまここにいることが 答えと信じて」と。
人と関わる、ということは、そういうものじゃないかなぁ、と最近とても思います。
想い通じてほしい相手がそこにいる。それは、恋愛とかそういうことに限らず、いろいろな場面、いろいろな理由で、気持ちをわかってほしい、と思う人。でも、なかなか思うようには伝わっていかない。自分の非力をかみしめながら、もうやめようかと悲しく投げやりになりながらも、「でも」と踏みとどまって、その人を見つめてしまう。
本当は大好きな人。本当は力になって上げたいと思っている人。そばにいるよ、と言ってあげたいのに、その気持ちがなかなか伝わっていかない人。そういう人を前に、立ちすくんでとまどってしまっている自分。
だけど、そういうふうにその人を想いながら、たどたどしく関わっていること自体が、本当に、もう「答え」なのかもしれません。
たぶん、人とかかわっていくことに、「正解」は存在しない。
友達の間であっても、親子の間であっても、夫婦でも――これが正解、これが一番いい、というやり方は存在しなくて、いつも、相手をわかりきれない苦しみを味わいながらも、「一緒にいる」そのことで続いていく。
それでいいんじゃないかな、と思います。
人生を四十年以上も生きてくれば、人生の先に華々しい成功や誰もが納得するような素晴らしい幸せが待つわけじゃないのはわかってしまいます。
人生はおとぎ話のように、「そして主人公は幸せになりました。めでたしめでたし。」で終わるようなものではなく、なんとなく、ずうっと、死ぬまで続いていくもので。その中には喜びも悲しみも苦しみも、まるで大小の石や宝石のようにちりばめられていて。
その中を歩きながら、誰かと共にいたい、と願うこと、そのことが幸せの本当の姿なのかも、しれません。
☆平原綾香「そら」
試聴もできますが、残念ながら「しあわせ」は聴けないようです。
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