さて、改めて昨夜の「時効警察」の感想を・・・。
毎回、雰囲気や作り方が違うのがこの「時効警察」の面白さではあるけれど、その中でも昨夜の話はずば抜けて異質だった。
コメディーじゃない。ミステリーでも刑事物でもない。
このシリーズは、最初に『時効』の判がポンと押された時効のファイルを、霧山が興味を持って手に取る場面から始まるのだけれど、今回はそれさえなかった。なにしろ、時効まであと3日に迫った殺人事件の犯人であるスナックのママ(であり、高校生の女の子の母親。整形して顔を変えている)と、時効事件を趣味で捜査することに疑問を感じて悩む霧山、ママに恋する中、その正体に気がついて悩む刑事の十文字、それらの人々を見てこれまた心傷める三日月・・・という人々が織りなす人間ドラマなのだもの。
私は常々、コメディーができる役者は実力派の芸達者な人たちなのだと思っているのだけれど、今回の話はそれを見事に証明していた。いつもは訳の分からないボケをかましてくれる十文字が、いやぁ、かっこいいこと、ステキだこと。「刑事」と「男」の間で揺れ動く葛藤を見事に演じていた。三日月さんの表情だけの演技もぐっと来たし。
ストーリー的にも本当にほろりと来るものがあって・・・。悩む霧山。怯えながら時効を待ちこがれているけれど、どこか潔くて、その心情を思うと泣けてくるような犯人のママ。こういう人間ドラマは私好みのものだ。いいストーリーだったと思う。
ただし、これが「時効警察」でさえなければ!(笑)
正直言って、あまりにも、これまでの作品との雰囲気が違いすぎた。
コメディーだったはずなのに、なんでこんなにシリアス?
犯人は最初からなんとなく目星はつくけれど、コミカルな会話や登場人物の行動に噴き出すうちに、次第に事件の全貌が明らかになってきて、最後に霧山くんがかっこよく時効事件の真相を暴き、恐れ入った犯人が「善意の自白」をした後、霧山くんが『誰にも言いませんよ』カードを犯人に手渡す・・・。
どんなに一回ごとに雰囲気が違っても、作り方が変わっていても、この基本コンセプトだけは、無くしてはいけなかったんじゃないかな。
昨夜の作品は、同じ設定、同じ登場人物ではあったけれど、「時効警察」とは全く別の作品、と私には見えた。
そして、これまで見てきた「時効警察」と、どうしても頭の中で同一作品に思えなくて、テレビの前で七転八倒してしまった。
このシリーズは数人の脚本家が交代で脚本を書いている。
だから、一回ごとに雰囲気や持っていき方が違うのも当然なのだけれど、それにしても、違いすぎる。
いや、前々回の作品とだけは共通点はあった。同じ脚本家による作品だ。
真面目な推理ドラマになっていた「崖っぷち殺人事件」とは、同じコンセプトがあった。
いわく「犯罪は、時効が来ても罪は罪」。それが、今回の整形美人のスナックのママの事件とも共通していた。
だけど・・・これって、そもそもの「時効警察」とコンセプトが違っているのでは?
崖っぷち事件の時、最後に霧山くんがこれを言った時、私はものすごく違和感を感じたのだもの。
犯罪は時効が来てもやっぱり罪。――だけど、それには相応の理由や背景があって、それを思いやった時、あえて罪を罪として問わない。それが霧山くんの『誰にも言いませんよ』カードであり、それを描く人情ドラマが、この「時効警察」の良さだと思って見ていたから。
今回の作品、これは「時効警察」じゃないよねぇ・・・・・・。
旦那はこういう物語がとても好きらしい。今回の話をとても感激して見ていた。
先に書いたとおり、私も本当はこういうストーリーが大好きだ。役者さんたちの演技もとても上手だったし。だけど、「時効警察」としての雰囲気にそぐわなくて、そのギャップに苦しんでしまった。
オダギリさんも、なんだか今回はとても演りにくそうだったなぁ。
あれで、次回はまた、みんないつものコミカルでハイテンションなキャラクターに戻ってしまうんだろうか。彼らの内側に、実はこんな人間性があったんですね、と受け取るには、ちょっと苦しすぎるような・・・。
来週も脳内調整に時間がかかりそうだわ。(苦笑)
今回の最後にでたテロップを見ると、どうやらこの脚本家は今回で終了らしい。
こう言っては気の毒かもしれないけれど、正直ホッとした。時々、この調子でギャップのある作品を見せられると、シリーズ全体をひとつのものとして捉えられなくなって、楽しめなくなってしまうから。
でも、繰り返して言うけれど、作品そのもの、ストーリーそのものは、本当に良かったと思う。とても味がある内容だった。「時効警察」ではないところで、発表してほしかったな・・・。
ふー。
次回は、とぼけた味で時効事件の犯人を追いつめ、善意の自白をさせた上で、『誰にも言いませんよ』カードを手渡す霧山くんの勇姿を期待したいと思います。
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